メインストーリー
□優しいkissを… vol.4
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‐1月2日‐
昨日の夜から、降り始めた雪は、朝起きると、すっかり街の様子を変えていた。
太陽の日差しに反射して、眩しいくらいに真っ白な雪の中、慎重に足元を気にしながら、私は駅に向かっていた。
(お正月に、こんなに積もったのって、何年ぶりだろう。…出来れば今日は、積もって欲しくなかったな)
振り袖の裾を少し上げながら、だんだんと足早になる。
電車の時間には、まだ間に合うんだけど、少しでも早く、そらさんに会いたい気持ちが、私の足を速めていた。
昨日、お父さんの都合で帰っちゃったそらさん。仕事が終わったってメールが来たのは、12時近くだった。
予定では、そらさんが車で迎えに来てくれる事になっていたんだけど、遅くまで仕事してた、そらさんの事が心配で、電車で行くって言ってしまった。
駅に着くと、時刻表を確認しに改札口の方へ向かう。
(なんだろう、人だかりが出来てる)
確かに、お正月で混雑はしてるんだろうけど、なんだか様子がおかしい。
「何か、あったんですか?」
人だかりの一番後ろにいた、同じ年くらいの女の人に尋ねた。
「あぁ、何かトラブルがあって、電車来ないみたいよ」
「えっ?」
私は嫌な予感がして、人だかりの脇の方から改札口の前まで行ってみると、対応に追われている駅員さんが、
「申し訳ありません。この積雪で、電車が遅れてます」
そう、繰り返していた。
「あのっ!どれ位遅れるんですか?」
私は、思わず駅員さんに詰め寄る。
「只今、全力で復旧に向けて努力しておりますが…まだ、メドがたっておりません…」
「そんな…」
そらさんと待ち合わせの駅まで、電車で約1時間。
乗るはずだった電車で、待ち合わせの時間にちょうど間に合う予定だったのに。
(どうしよう……)
頭の中が、真っ白になりそうだった。でも、そんな暇はなかった。
(なんとかしないと…。
今から、そらさんに迎えに来てもらう?ううん、急にそんな事言えないよね。
そうだ、車…タクシーは?2時間位あれば着くかも?待ち合わせの時間には遅れるけど、来るか分からない電車を待つより、いいかも)
そう思った私はタクシー乗り場に向かい、停まっていたタクシーに飛び乗った。