メインストーリー

□優しいkissを… vol.4
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今、どの辺りなんだろう‐。

ゆっくりと流れる街の風景とはうらはらに、時間だけが、あっという間に過ぎていく。

もう、待ち合わせの時間も30分は過ぎている。

(そらさん、怒ってないかな)

だんだんと、焦る気持ちが不安に変わっていく。


突然、交差点でもないのに、タクシーが停まった。

「ありゃー、事故みたいだね」

運転手さんが窓を開けて、前の様子を伺う。
私も窓から顔を出して見てみると、パトカーらしきランプが点滅しているのが見えた。

「進めそうですか?」

運転席のシートにしがみついて尋ねると、

「うーん、こっちの方がマシかな。遠回りだけど。」

そう言いながら、細い路地へ曲がった。
少し行くと、また大きな通りに出た。
左右から来る車の間に、ようやく割り込んだのに、また進まない。

「あー、やっぱり、こっちは混んでるなぁ。もう少し行くと駅前の通りに出るんだけどね」

「いいです。ここで降ります」

私は居ても立ってもいられず、財布を出しながらそう言うと、運転手さんは驚いて振り向いた。

「もう少しって言っても、1q位はあるよ」

「大丈夫です」
そう言い切ってタクシーを降りると、駅に向かって走り出した。

歩道の上は、積もった雪が通行人に踏まれて泥混じりに汚れていた。
所々、陽が差す場所は雪が溶けて、泥水みたいになってる。
私は、時々つまずきそうに、滑りそうになりながら、着物の裾を上げて走った。

(そらさんが待ってる)

その事だけしか頭になかった。

駅に近づくにつれ、人が多くなってきた。
すれ違う人達を避けながら走っていると、ようやく駅が見えてきた。

私は、少しだけ速度を緩めると、そらさんに電話をする。

「もしもし?紗絢ちゃん?着いたの?」

…よかった。いつもの声…。
でも、返事をしようとしたけど、息が苦しくて言葉がでない。

「どうしたの?何かあった?」

「だ…大丈夫です。ちょっと走ったから…息が…」

「今、何処にいるの?」

「えっと…、西口に…着いたところです」

駅の中は、たくさんのお店が立ち並び、人が溢れていた。
私は、立ち止まると大きく呼吸をしながら、そらさんを探す。
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