メインストーリー
□優しいkissを… vol.4
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そらさんは、パッと笑顔に戻って立ち上がると、私の横に座った。
「不思議だよね。昨日も逢ったのに、今日になると、またこんなに逢いたくなるって。逢えるってわかってたから、余計にね」
そう言いながら、私の髪に手を伸ばして、落ちそうになってた髪飾りを直してくれる。
「ねぇ、この着物、オレの為に着てくれたの?」
私は頷いて、足元を見てみると、裾はズリ下がって、足袋は雪と泥水で真っ黒になってた。多分、頭もぐしゃぐしゃだ。
「でも、こんなになっちゃって、格好悪い…」
「そんな事ないって、すっげーカワイイし、超うれしい!」
頭を撫でていた手が、背中に回って、私は優しく抱きしめられる。
暖かい……。
あんなに逢いたかった、そらさんに私は今、抱きしめられてる。
そう思ったら、それまでの辛かった思いがゆっくりと消えていくのを感じた。
「よしっ、それじゃ、飯食って、初詣行こっか。オレ腹減ったぁ。」
「はい!」
「でも、その前に呉服屋だね。確かここの駅ビルにあったと思うから。その足じゃ、冷たいっしょ?」
そう言って、そらさんは優しく笑った。
それから私達は呉服屋に行って足袋を買い、髪と着物を直してもらうと、駅の中の飲食店で食事を済ませて、駅を出た。
駅を出て、少し歩くと神社がある。
「遅くなっちゃいましたね」
「でも、少なくていいじゃん」
夕方近いせいか、参拝客はまばらだった。
私達は、二人でひとつの鈴を鳴らして、お詣りをする。
(そらさんが、お仕事で怪我したりしませんように)
手を合わせたまま横を見ると、そらさんは、まだ手を合わせていた。
私もまた目を閉じると、
(そして、そらさんとずっと一緒にいられますように)
そうお願いをする。
二人ほとんど同時に頭を上げると、顔を見合わせて笑った。
「ずいぶん、熱心にお詣りしてたね」
「そらさんも」
「来年も、また一緒に来ようね」
「はい」
そして、手をつなぐと、すっかり雪が溶けた参道を通って、私達は神社を後にする。
そらさんの手のぬくもりに、幸せを感じながら……。
‐おわり‐