メインストーリー

□優しいkissを… vol.4
5ページ/5ページ

そらさんは、パッと笑顔に戻って立ち上がると、私の横に座った。

「不思議だよね。昨日も逢ったのに、今日になると、またこんなに逢いたくなるって。逢えるってわかってたから、余計にね」

そう言いながら、私の髪に手を伸ばして、落ちそうになってた髪飾りを直してくれる。

「ねぇ、この着物、オレの為に着てくれたの?」

私は頷いて、足元を見てみると、裾はズリ下がって、足袋は雪と泥水で真っ黒になってた。多分、頭もぐしゃぐしゃだ。

「でも、こんなになっちゃって、格好悪い…」

「そんな事ないって、すっげーカワイイし、超うれしい!」

頭を撫でていた手が、背中に回って、私は優しく抱きしめられる。

暖かい……。
あんなに逢いたかった、そらさんに私は今、抱きしめられてる。
そう思ったら、それまでの辛かった思いがゆっくりと消えていくのを感じた。


「よしっ、それじゃ、飯食って、初詣行こっか。オレ腹減ったぁ。」

「はい!」

「でも、その前に呉服屋だね。確かここの駅ビルにあったと思うから。その足じゃ、冷たいっしょ?」

そう言って、そらさんは優しく笑った。
それから私達は呉服屋に行って足袋を買い、髪と着物を直してもらうと、駅の中の飲食店で食事を済ませて、駅を出た。


駅を出て、少し歩くと神社がある。

「遅くなっちゃいましたね」

「でも、少なくていいじゃん」

夕方近いせいか、参拝客はまばらだった。
私達は、二人でひとつの鈴を鳴らして、お詣りをする。

(そらさんが、お仕事で怪我したりしませんように)

手を合わせたまま横を見ると、そらさんは、まだ手を合わせていた。
私もまた目を閉じると、

(そして、そらさんとずっと一緒にいられますように)

そうお願いをする。


二人ほとんど同時に頭を上げると、顔を見合わせて笑った。

「ずいぶん、熱心にお詣りしてたね」

「そらさんも」

「来年も、また一緒に来ようね」

「はい」


そして、手をつなぐと、すっかり雪が溶けた参道を通って、私達は神社を後にする。

そらさんの手のぬくもりに、幸せを感じながら……。


‐おわり‐
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ