メインストーリー
□優しいkissを… vol.5
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「これ!どうしたんですか!?」
そらさんの左手首に、白い包帯が巻いてあった。
「あぁ、これ?何でもないよぉ」
シャツの袖口で隠しながら、笑う。
「何でも……って…」
「ちょっと、擦っただけだって。そんな顔しないでよ。オレの方が不安になっちゃうじゃん」
「でも、包帯なんて……」
(せっかく、怪我しないようにお詣りしたのに……)
そう思った時、
「そら?」
女の人の声がして、私達は柱から顔を出す。
「何してるの?そんな所で」
そこにいたのは、紺のパンツスーツをビシッと着こなし、髪を頭の後ろでまとめ上げた、いかにも仕事が出来ますって感じの女の人だった。
(わぁー、キレイな人)
女の私でも見とれていると、
「なんだよ、ミキ」
そらさんが女の人の名前を呼んだのを聞いて、ドキッとした。
そらさんが柱の陰から出ると、
「なんだよ、は、ないでしょ。怪我の具合はどう?」
「こんなの怪我の内に入らないっつーの」
「3針縫ってるくせに?」
「えっ?」
驚いて私も飛び出すと、
「余計な事言うなよなー」
そう言って、女の人を肘でつつく。
「本当の事じゃない。それに、私が気付くのがもう少し遅かったら、これくらいじゃ…」
「あーもう、分かっってます!感謝してます。サンキュ、サンキュ!」
(なんか……仲良さそう)
じっと彼女を見ていた私に気付いた、そらさんが、
「あ、紗絢ちゃん、彼女はオレの同期のSPで…」
「吉森ミキです。総理のお嬢さんですよね。初めまして」
私の前にさっと、手を差し出す。
なんだか気後れして、モタモタしてると、私の手をとって、
「よろしく」
そう言って、ニコっと笑った。
「はい。よろしく…お願いします」
(女性のSPさんかー。なんか、厳しそう…でも笑うと、ちょっと“カワイイ”)
戸惑いながらも挨拶すると、吉森さんは、くるっとそらさんの方を振り向いた。
「そう言えば、そら、桂木班長が探してたわよ」
「お前ねぇ、そう言う事は先に言えって」
そらさんは、ちょっとため息をつく。
「紗絢ちゃん、SPルームに行っててよ。今日、総理と紗絢ちゃんの警護につく、瑞貴がいる筈だから」
「はい」
(なんだ…そらさんが来てくれるんじゃないのか)
少しがっかりして、手を振って去って行くそらさんを見送る。