メインストーリー
□優しいkissを… vol.5
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「それじゃ、私も失礼…」
「ちょっと待って下さい!」
立ち去ろうとする、吉森さんを呼び止める。
「あの…そらさんの怪我って、ひどいんですか?」
多分、そらさんに聞いても、本当の事は言ってくれないだろうから、思いきって聞いてみる。
彼女は、チラッとそらさんが去って行った方を見てから、
「…さぁ、大丈夫なんじゃない?本人がそう言ってるんだし」
って、肩をすくめた。
それから、私の顔を見て、
「あっ!失礼しました!総理のお嬢さんに向かって…」
「吉森さん、やめて下さい!お父さんは偉いかもしれないけど、私は偉くないし、SPのみんなも、そんな扱いしてくれるのって桂木さん位だし、私の方が年下だし…」
頭を下げていた吉森さんは、私を見上げると、クスっと笑って、頭を上げる。
「お嬢さんって、イイ子ね。ミキでいいですよ」
「それじゃ、私も紗絢でいいです」
それから、私を観察するように上から下へ視線を落として、思いもよらない事を言った。
「そらと付き合ってるって、本当なの?」
「え?…どうして?」
「うーん…」
ミキさんは、少し悩んだように間を置いて、話し始めた。
「ちょっと立場を無視して、話しても?」
「はい」
「私って、こーいう性格だし、ウジウジするのイヤだから、言っちゃうけど、そらの事、好きなの」
(今…、なんて?)
「初めて一緒に仕事した時から、ずっと」
(聞き違い…?じゃない。
『好きなの?』って聞かれたんじゃなくて、そらさんを『好き』って言ったんだ)
「ミキさん…あの、私…」
「あ、別にだからどうするって話でもないの。多分、そらは気付いてないだろうし。そらが付き合ってる子の話なんて、今まで散々聞かされてるし」
笑いながら、そう言ってたかと思うと、フッと私の顔を見た。
「紗絢ちゃんは、今までのそらの彼女とは、違うタイプみたい」
「よく言われます」
(それが、どういう事を意味してるのか、未だに分からないンだけど)
「もしかしたら、今度は、本物なのかも…」
「……ミキさん」
どう、返事したらいいのか、迷っていると、
「気にしないで。私も気にしてないから」
「えっ?」
(気にしてないって…私の事を?)