メインストーリー
□優しいkissを… B.D特別企画
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7月20日―
私は昴さんに言われて、朝から官邸のキッチンでそらさんの誕生日パーティーの料理を作っている。
とにかく、そらさんが好きなメニューを並べたら、焼きそばとか、ビーフシチューとか、何料理なんだかわからなくなってしまい、昴さんが考えた何品かを加えて、思い切り豪華なごちそうが出来上がった。
「まぁ、こんなとこだろうな」
「はい。あとは、バースデーケーキにデコレーションするだけですね」
「それは、お前に任せる。好きなように飾ってみろ」
「いいんですか?」
昴さんが大きく頷いたのを見て、ケーキに生クリームを絞る。
「ところで紗絢さん、今日の事は、そらさんに何て言ったの?」
一緒に手伝ってくれてた瑞貴さんが、ケーキの向こう側でテーブルに頬杖をついて話しかける。
「いえ、何も。私がプラン立てるからって言っただけで、そらさんが仕事終わったら連絡くれる事になってるんです」
「フフッ。そらさん、きっとソワソワしてるよね」
「ソワソワどころじゃねーよ」
いつの間にか、仕事あがりの海司がキッチンの入り口に立っていた。
「そらさん、朝からニヤケっぱなしで、そのくせ俺らに今日、誕生日だって言わねーし」
「アイツの事だから、言ったら紗絢と2人で過ごすつもりの誕生日が、邪魔されるとか思ってるんだろ」
「そんな事ないですよ。皆さんがこうやってお祝いしてくれるって知ったら、そらさんきっと喜ぶと思います」
「どちらにしても、俺達がそらの誕生日に気付いてないって思ってるなら、都合がいい」
「…はい!出来ました!どうですか?」
チョコのメッセージプレートに、ホワイトチョコのデコペンで『HAPPY BIRTHDAY そらさん』の文字を入れて、フルーツや生クリームでデコレーションしたケーキの上に飾ると、みんなの方へケーキをくるっと回す。
「まぁ、紗絢にしては上出来だな」
「うまそう」
「でも、このメッセージ、平凡過ぎない?例えば、『愛するそらさんへ』とか…」
「こ、これでいいですっ!」
瑞貴さんの言葉に照れながら、私はケーキを箱に入れて冷蔵庫にしまう。
「それじゃ、そろそろSPルームに移動するか」
昴さんがエプロンを外して、時計を見る。
もうすぐ、お昼の12時。
そらさんが警護の仕事から戻ってくる頃だ。
「料理も運びますね。そらさん、びっくりしますよ」
「いや、料理は後だ」
「え?」
料理を盛り付けた大皿を抱えると、昴さんがそれを止める。
「まずは、向こうに行ってからだ」
私達は、料理をそのままキッチンに残し、SPルームに向かった。