メインストーリー

□優しいkissを…vol.8
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ここは、日用品や生鮮食品の他に薬局や酒店もテナントに入っているから、ほとんどの物が揃う。

(えっと、保冷剤は…あ、あったけど、冷えてない…って、当たり前か。水枕は…結構高いんだ。どうしようかな。確か氷は冷凍庫にあったよね)

ゴム製の水枕と栄養ドリンクを薬局で支払うと、食品コーナーで雑炊の具や、そらさんが食べれそうな物を買う。


そらさんの部屋に戻って、買って来たものを冷蔵庫にしまい、水枕に氷と水をいれると、それを持って寝室に行く。

よく寝ているみたいなので、静かにベッドに近づいて、顔を覗くと、おでこに乗せていたタオルが、顔の横にずり落ちていた。

そのタオルを退けて、濡れた柔らかな髪の生え際を乾いたタオルで拭うと、首筋に汗が伝わっているのに気付く。

(汗かいてる。薬が効いてきたかな。着替えた方がいいよね)

私は脱衣室に行って、置いてあるチェストを上から順に開ける。

(確か、この中にTシャツが…あった!……えっとぉ“下”は…いいかな)

引き出しから、Tシャツだけを取り出すと、後は寝室のクローゼットから、パジャマの代わりになりそうなトレーナーを、探し出した。
結構、ガタガタうるさかった筈なのに、全く起きる気配がない。
私は、そっと声をかける。

「そらさん、汗かいてるから、着替えましょう」

「ん…んー…」

布団から、片腕だけ出してちょっとだけ顔をしかめたものの、また、動かなくなってしまった。

「ねぇ、着替えないと、体冷えちゃいますよ」

軽く肩を揺すってみるけど、反応がない。

「困ったな。…こうなったら…仕方ない」

私は、布団をそらさんの腰までめくると、ジャージのファスナーを下ろす。
片方の袖口を掴んで腕を抜くと、背中とベッドの間に手を入れて、身体を少し浮かせて、ジャージを引っ張り出す。

(ふぅっ、そらさん女装する割に肩幅、結構あるよね。目立たない服選んでるのかな)

とりあえず、ジャージを床に置いて、そらさんが着ているTシャツを少しずつ、脇の下辺りまでズルズルと引き上げる。

シャツの中に手を入れて、そらさんの腕を掴むと、肘を曲げて腕を出す。
もう片方の腕も同じように出すと、頭を持ち上げて、シャツを脱がせた。

(はぁっ、やっと脱げた)

汗で湿ったTシャツを、ジャージの上に置いて、タオルを手に視線を戻すと、露(あらわ)になったそらさんの躰に、ドキッとする。

そらさんの裸なんて、初めて見る訳でもないのに、仰向けになって、無防備に横たわるその姿と、少し火照ったあどけない寝顔に、思わず鼓動が走り出す。

(やだ…私ったら。何考えてるの?)

軽く頭を振って、なんとか理性を取り戻すと、タオルで汗を拭き取る。

額から首、肩、胸…。

すると、右肩と左の上腕に古い刺し傷の様な物を見つける。脇腹にはアザも。そして、左の手首には、少し前に抜糸したばかりの傷跡。
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