メインストーリー
□ブライダル配信記念〜ある日の広末家〜
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―脱衣室―
鏡の前で、背中の中程まで伸びた風花の髪を、くしゃくしゃと手ぐしで梳きながらドライヤーをあてるそらさん。
「ずいぶん伸びたね」
「うん。でも切ろうか迷ってるの」
「なんで?」
「あのね、カナメ君は長い髪が好きなんだけど、ユウキ君は短い方が好きって言うの。だから…」
「そ、そうなんだ。…風花はユウキ君が好きなの?」
「うーん。どっちも好き。だから迷ってるんだ」
困った顔をする風花を鏡越しに見ながら、そらさんは複雑な気分になるのだった。
「風花はもう寝た?」
風呂からあがって食卓につくそらさんの前にグラスを差し出す。
「はい。髪、乾かしてもらって、喜んでましたよ。って、どうかしたんですか?ため息なんかついて」
そらさんが手にしたグラスにビールを注ぐと、そらさんは風花の髪の事を話した。
「参ったよ。風花が男の事で悩むなんてさ、いくらなんでも早くね?っつか、ユウキ君とカナメ君って誰」
「幼稚園の友達です。二人共とってもいい子で、風花と仲良くしてくれて。あの子意外とモテるんですよ。そらさんに似たんですね」
「えー?それだったら紗絢似だろ?」
「そんな事ないですよ。さっきみたいに抱きつくとこなんか、そらさんそっくり」
「そお?でも…まさかオレ以外のヤツにもやったりしてないよね」
「そう言えばこの間、お父さんの所に行ったら、お父さんにもやってたし、たまたま会った海司にも」
「お義父さんにはわかるけど、海司にまで?!…どうりで、やたら風花の事『可愛いっすね』なんて言ってたわけだ。あのやろう〜」
「そらさん?…本気で怒ったりしてないですよね」
「え?してない、してない。明日ちょっといじめてやろうかと思っただけ」
「もう。海司に妬きもちやいてるんですか?」
「んな事ないけど…なんかムカつくじゃん」
(これって…妬きもちだよね…)