メインストーリー

□優しいkissを… vol.10
2ページ/5ページ

公園の中は、遊歩道が整備されてて、道沿いには色とりどりの春の花が、綺麗に並んで咲き誇っている。

あちらこちらで、子供のはしゃぐ声がして、家族連れや恋人同士が花を眺めながら、楽しそうに行き交う。

「綺麗ですね」

「ほんとだね〜。でもオレ的には、花とか詳しくないから、紗絢ちゃんの喜んでる顔見てた方が、楽しいかな」

ゆっくりと歩きながら、私の顔を覗いてるそらさん。
目が合うと、途端に恥ずかしくなる。

「そんな事言わないで、花、見て下さいよ」

私は、ちょっとだけ足早になり、そらさんより先を歩いた。

「あ、ちょっと待って!紗絢ちゃん」

「え?」

振り返ると、そらさんが立ち止まり、手招きしてる。


「どうしたんですか?」

「こっち行こ」

そらさんは、私の手を握り、遊歩道から外れて、木々の間の小路に入って行く。


少し登り坂になっている、枯れ葉混じりの小路を行くと、急に視界が開けた。

そして、そこには一面の菜の花畑が広がっていた。

「わぁっ!すごーい!」

まぶしい程の、菜の花色。
漂う、甘い香り。

「きちんと植えられた花も綺麗だけど、こんな花畑もいいよね」

そらさんは大きく背伸びする。

「なんだか、懐かしいような、ほっとする感じがしますね」

私も、そらさんの横で菜の花を眺める。
そらさんは、私の肩をそっと抱き寄せた。

私は、そらさんの肩にもたれながら、

「でも…こんな所、どうして知ってたんですか?初めて来たって言ってましたよね」

「えっ?!…それは…。ま、いいじゃん。せっかく二人っきりになれたんだし」

チュッ。

ちょっと上目遣いで、見ていると、そらさんに 軽くキスされた。

(なんか、上手くはぐらかされたような…)

私は、ぽっと耳の辺りが熱くなるのを感じて、視線を菜の花に移した。

「あれ?紗絢ちゃん、赤くなってない?かわいいな〜もう。ここなら押し倒しちゃっても、誰も気付かないよね」

「は?! な…何言ってるんですか? こんな所で?!」

思わず動揺してしまう。

「あははっ。冗談に決まってるっしょ〜。いくらオレでも、こ〜んな、お陽様の真下じゃ、さすがにねー。もしかして、期待した?」

「! してません! もう、そんな事言うんだったら、お弁当あげませんよ!」

持って来たトートバッグを、わざと後ろに隠して見せる。

「えっ?紗絢ちゃんの手作り弁当? 嘘、嘘。ゴメン、謝るから、食べさせてっ」

両手を合わせて、頭を下げるそらさん。

「ふふっ。そらさんの為に作ってきたんですよ?一緒に食べましょ?」

「やったぁ!いっただっきまぁす」

草むらに 座り込み、菜の花に囲まれて、私達はお弁当を食べる事にした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ