メインストーリー
□優しいkissを… vol.12
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―空を見上げて―
大学の昼下がり…。
今日は朝から、とてもいい天気。
広い芝生の中庭にある、メタセコイヤの樹の下で、私とみどりは、お昼のお弁当を食べる事にした。
「気持ちいいね〜。外で食べるの」
ベンチに座り、手足を伸ばして深呼吸するみどり。
「うん、湿度も気温もちょうどいいし、梅雨入り前の貴重な晴れ間だよね」
新緑の香りを含んだ空気を、思い切り吸い込みながら背伸びすると、空まで届きそうなメタセコイヤの樹の葉が、私の顔に影を落とす。
お弁当を食べ終わると、みどりは部室に用事があるからと、先に校舎の方へ戻って行き、私は午後の授業が始まる迄、次の公演の台本を読んでいた。
ふと、初夏を思わせる陽射しに目を細め、広い空に視線を向けてみる。
雲1つない青空には、出来たばかりの飛行機雲が、スーッと1本のラインでアクセントを付けていた。
(きれいな青空…)
爽やかな5月の風に吹かれながら、私はそらさんの顔を思い浮かべる。
いつも明るいそらさん。人なつっこくて、みんなに慕われてて。
嫌な事や辛い事があっても、元気をくれる…。
こんな皐月晴れの空のような…。
なんて事を考えてると、バッグの中の携帯が鳴り出した。
(うそ!そらさんから?!)
「もしもし?」
電話はそらさんからだった。
そらさんの事を考えていたばかりだから、なんだか恥ずかしい気がしながら電話に出る。
「あ、オレオレ〜」
いつもの口調のいつもの声に、思わず顔がほころぶ。
「どうしたんですか?今日は、夜まで仕事って言ってましたよね」
「あ〜うん…実はさ〜」
急に声のトーンが下がって、嫌な予感がする。
「ゴメンっ。明日、休みだったけど、急に仕事入ってさ……デート無理そうなんだよね」
(えっ?!)
驚きと残念な気持ちが、一気に押し寄せる。
(せっかく楽しみにしてたんだけど…。いつもの事だし、仕事だから仕方ないか)
と、自分を納得させて、携帯を持ち直す。
「そうですか。残念ですけど、仕事頑張って下さいね」
「う…ありがとう。紗絢ちゃんにそう言って貰えると、ヤル気出るよ。いつもゴメンね」
「いいえ。でも…次はいつ会えるのか、まだわからないですよね?ちょっと寂しいかも…」
ちょっぴり、本音を口にしてみる。
「あ〜もう。そんな可愛いい事言うの反則!…………」
「………?」
「………………」
「え?そらさん?もしもし?」
急に途切れた、そらさんの声。
(電波の悪い所からかけてたのかな)
一旦、通話を切って、私はそらさんに掛け直そうと、うつ向いて携帯のボタンを押そうとした、その時。
「!!」
心臓が、ドキッと脈うつ。
後ろから、誰かの手が私の両目を塞いだのだ。