メインストーリー

□優しいkissを… vol.12
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「だ〜れだ」

聞き慣れた声と、フワッと漂う覚えのある香りにホッとしながらも、違う意味で驚く。

「そらさん?!」

「もう、当てるの早すぎっ。少しは悩んでくんないと、つまんないじゃん」

目から、そらさんの手が離れると、私は座ったまま振り返る。

そこには、確かにさっきまで携帯で話してたそらさんが、いつもと変わらない笑顔でベンチの背もたれに手をついていた。


「そらさんの声、間違えるわけないでしょ?でも今、携帯で…」

「すぐそこでかけてたんだもん。
へへっ、びっくりした?」

「当たり前ですよ〜。全然気付かなかったんですから。どうして、ここに?」

「うん。明日仕事が入った代わりに、今日、午後から休みになったんだ。で、紗絢ちゃんに逢いたいなぁ、って思って部室に行ったら、みどりちゃんに、ここに居るって聞いたからさ。
もうちょっと話してから、出てこようと思ったのに、あんな事言うから我慢出来なくなったじゃん」

ぎゅっと 上から覆い被るように抱きしめられた。


相変わらず、そらさんにはドキドキさせられる。いたずらっ子のように、私を驚かせたり、喜ばせたりするのが大好きなそらさん。


「ところでさ、さっき何見てたの?」

そらさんは、そう言いながらベンチを回り込んで、私の横に座る。

「さっき?」

「ずっと上見てたっしょ?何か飛んでたの?」

空を見渡しながら、“何か”を探すそらさん。

「空を見てたんです。きれいだなぁって…」

「そうなんだ。ホント気持ちいい天気だよね」

そらさんは、背もたれに両肘をかけると、目を閉じて深く息を吸い込む。

私は、そんなそらさんを見て、心の中がキュンとして、

「何か…そらさんみたいだなぁって」

思わず、そう言ってしまった。


「ん?どういう事?」

不思議そうに見つめ返すそらさんに、フフッと笑って見せると、私はまた、空を見上げる。


「名前のせいかなぁ。空を見てると、すぐそらさんの事思い出しちゃって。そ・ら・って、いい名前ですよね」

「え〜?そうかなぁ。そんな風に思った事ないけど」

少し照れながら、意外そうな顔をするそらさん。

「そう言えば、初めて会った頃、“そらっぴ”とか“そらぴょん”って呼んでって言ってましたよね。今でも、呼んで欲しいですか?」

「確かに、そんな事も…ってか、今は紗絢ちゃんには、そんな風に呼ばれたくないかなぁ。たまにならいいけど?」

「そうなんですか?」

顔を見合わせて笑うと、そらさんが私の肩に手を回す。

そして私は、そらさんの肩に頭を預ける。
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