メインストーリー
□優しいkissを… vol.13
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「紗絢ちゃんちには、オレ用の食器とかあるじゃん?」
「それは、うちでご飯食べる事が多いから」
「確かにそうだけど、うちにも紗絢ちゃん用の物があると、何か一緒にいるみたいで、嬉しいし」
ウチも元々一人暮らしだったから、そんなに余分な物はなかったけど、たまにみどりや部長がご飯食べに来たりしてたから、2、3人分の食器は置いてた。
でも、そらさんがウチに来るようになってから、箸やご飯茶碗は、そらさん用に新しく買い揃えていたんだよね。
「それじゃ、今度の休みは、お買い物デートですね」
「うん。楽しみだね」
大好きな人が使う物が自分の家にあるだけで、その人の事を感じられるのって幸せかも。
おしゃべりしながら、食べ終わると、私は食器を片付け始めた。
「ごちそうさまでした。コーヒー淹れましょうか?」
「ありがとう」
そらさんが、一緒にお皿を運んでくれる。
「でもさ」
ふと、思いついたように話し出す、そらさん。
「考えてみたら、両方の家に買い揃えるの、もったいないって言えばもったいないよね」
「え?」
「結婚しちゃったら、そんなにいらないじゃん。めんどくさいから、いっその事このまま一緒に住んじゃおっか」
「えぇっ?!…あっ!!」
「ぅわっ!大丈夫?」
そらさんの言葉に驚いた私は、持っていた皿を落としそうになって、咄嗟に体で受け止めた。
皿にはハンバーグのソースが残ってて、私のアイボリーのチュニックワンピースに、思いきりかかってしまった。
「あ〜ぁ、やっちゃった」
「じゃないっしょ!早く脱いで洗わないと!」
「え、でも……」
今日は、天気もよくて、暖かかったから、ワンピースの下は下着だけだし。
すると、そらさんはそれを察してくれたのか、
「ちょっと待って、何か着れるもの持ってくるから」
そう言って、キッチンを出る。
そらさんを追って、リビングに行くと、ソファーの上にそらさんのワイシャツが無造作に置いてあった。
「そらさーん、これ借りていいですか?」
「え?どれ?」
寝室から顔を出したそらさんにワイシャツを見せる。
「あ〜それ?別にいいけど、アイロンかけてないから、しわクチャだよ」
「いいです。服が乾く間だけですから。それじゃ、借りますね」
そう言いながら、私はワイシャツを手に洗面所へ向かった。