メインストーリー
□優しいkissを… vol.14
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バレンタイン当日。
学校が終わって官邸を訪れた私は、お父さんにチョコを渡してSPルームを訪ねた。
「もしかして、これって全部チョコ?」
部屋の中央の机の上には、高々と積み上げられたプレゼントの山。
「あぁ。ほとんどが昴さん宛てだけどな」
その山の向こう側でデスクワークをしていた海司が、素っ気なく答える。
「ほとんど…って事は、海司のもあるの?」
「バカにすんなよ。俺だってチョコくらいもらうに決まってんだろ。まぁ、持って帰っても姉貴達に食われちまうけどな」
「ふふ、毎年ホワイトデーには『何で食べてもいないチョコのお返ししなきゃなんねーんだ』って嘆いてますよね」
瑞貴さんは、もう仕事上がりなのか、私服に着替えていた。
「それじゃ、私も。はい、これお姉さん達に」
「おう、サンキュ…って、俺の分は?!」
「あはは、冗談よ。それは海司の分。お姉さん達にはこれ、渡しといてね」
「姉貴達にも?」
「うん。お世話になってる人達に感謝を込めて…って思って。はい、これは瑞貴さんに。いつもありがとうございます」
「わぁ、ありがとうございます。ノインやキャサリンと仲良く食べますね」
「え?ノインやキャサリンってチョコ食べるんですか?」
「いつも好き嫌いしないように言ってあるからね」
(そういう問題じゃないような。ハトやリスって普通チョコ食べるのかな…)
そんな事を疑問に思ってると、昴さんと桂木さんが帰ってきた。
「お疲れ様です。お邪魔してます」
「なんだ紗絢。俺にチョコ持って来たのか?」
「はい。でも昴さん他にもたくさんチョコもらってるみたいだし、迷惑かなって…」
「妬きもちか?チョコならウンザリするほどあるが、せっかくだからお前のチョコが去年に比べてどれだけ美味くなったか味見してやるよ。って、いてっ」
「昴!まったくお前は、失礼な事を…。スミマセン」
上から目線でニヤッと笑う昴さんの頭をポカッと叩いて、桂木さんが頭を下げる。
「いえ、そんな。大丈夫です、慣れてますから。それより、はい。これは桂木さんに」
「え?私にですか?」
「もちろんです。いつもお世話になってます」
「こちらこそ。ありがとうございます」
「それと…お願いがあるんですが。これ、石神さんと後藤さんと黒澤さんに渡してもらえませんか?」
「石神達にまでですか?」
「はい。中々お会いする機会がないので」
「わかりました。必ず渡しますね」
「よかった。どうやって渡そうかと…」
「つーか、いいのか?そんなにあちこちチョコばらまいて」
ほっとしていた私の顔を、昴さんが覗き込む。
「?…いいのかって?」
「そらさん、やきもち妬くんじゃないですか?」
瑞貴さんもからかうようにクスッと笑う。
「あ、大丈夫ですよ。そらさんにはちゃんと言ってますから」
「っつってもな、そらさん、絶対お前のチョコ独り占めしたい筈だぜ」
「もう、海司まで。そんな事ないってば」
その時、ドアが開いてそらさんが入ってきた。