書き下ろし
□Sweet 10(ten) Sweet
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木の葉が赤や黄色に色づく、秋のよく晴れた日―。
私とそらさんは結婚した。
あれから10年。
今日は、10回目の結婚記念日。
「早いな〜」
いつものように、縁側でお陽様の匂いのする洗濯物をたたみながら、秋色に染まる庭の木々を眺める。
「あの日も、イチョウやモミジが綺麗だったなぁ」
たくさんの人達に祝福され、温かな結婚式だった。
―本当に、幸せな……。
『♪♪〜♯♪〜♪〜』
10年前の想い出に浸っていると、1時間毎に時間を報せる壁時計のメロディに、現実に引き戻される。
秋も深まり、夕闇が迫る時間も早くなってきた。
(そろそろ夕飯の支度を始めないと…)
私は、たたんだ洗濯物を抱えると、2階へ向かった。
「風花〜。洗濯物〜」
両手がふさがっていたので、長女の風花の部屋の前で、声をかける。
いつもなら、幼稚園から帰って来ると、リビングでテレビ見たりしてるのに、今日は珍しく部屋にとじ込もっている。
カチャ…。
ドアが開いて、風花が隙間から顔を出す。
「何やってるの?」
そう言いながら、その隙間に体を入り込ませようとすると、風花の両手に押し戻される。
「入っちゃダメ!」
「え?…なんで?」
「なんででも!」
「…」
風花は、さっきよりドアを引き寄せると顔だけを出して、キッ、と睨んでる。
(はぁ…。この子がこんな顔する時は何言っても聞かないんだよね)
何をやってるのか分からないけど、私は諦めて風花の目の高さまで腰を屈めると、抱えてる洗濯物を差し出す。
「わかった。じゃ、部屋には入らないから、自分の洗濯物取って」
「うん。自分でちゃんとしまうから、お母さんは入らないでね」
「ハイ、ハイ」
私が返事すると、部屋のドアは勢いよく閉じられた。
来年の4月から小学校に通う風花は、最近特に色々な事を自分でやりたがる。
それは頼もしくて、とてもいい事ではあるけど…時々、すごく頑固で困る。
(ホント…あーゆーところは誰に似たのか…)
なんて思いながら、隣の大河の部屋のドアを開ける。
洗濯物をタンスにしまって、部屋を出ようとした時に、机の上にある封筒が目に留まった。
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