書き下ろし
□Sweet 10(ten) Sweet
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薄い水色の水玉模様の封筒…。
(これって…もしかして…ラブレター!?)
思わず手に取ってみると、宛名も差出人も書いてない。
それに、封もしていない。
(…と、いう事は、大河が書いた物?えー?誰か好きな子でもいるのかな。大河も来年は小学3年生だし、好きな子がいても変じゃない年頃?)
興味津々で中を覗こうとして手を止める。
(いくら母親でも子供の手紙を勝手に見るなんて…。でも、親として子供の気持ちを知っておく必要もあるんじゃ…。あの子、女の子の話なんてしないし。封もしてないから元通りにしておけばバレないし…。でもそんな問題じゃないよね。やっぱり子供のプライバシーも尊重して…)
葛藤を繰り返した末、私は机の上にそのまま封筒を戻した。
そして部屋を出て、うしろ髪引かれつつ階段を降りるとちょうど玄関のチャイムが鳴った。
そのまま玄関に行くと、ドアの向こうから大河の元気な声が響く。
「ただいまっ!」
「おかえりなさい」
鍵を開けて大河を出迎える。
大河の無邪気な顔を見たら、やっぱり手紙を勝手に見ないで良かったと、ホッとした。
もし見てたら、どんな顔して出迎えたらいいか困ったかもし
れない。
「おやつあるから、ランドセル置いておいで。ちゃんと手荒いと、うがいも…」
「あとで食べる!」
「え?」
私の言葉を遮るようにそう答えると、大河は階段を駆け上がって行った。
(いつもなら、真っ先に『おやつ!おやつ!』って騒ぐのに…)
風花といい、二人のいつもとは違う様子に、
(珍しいこともあるな)
と、思いながら私は夕飯の支度をしにキッチンへ向かった。
「さてと、夕飯何にしよう」
冷蔵庫を空けながら思案する。
そらさんは、一昨日から仕事で明日しか帰って来ない。
(私と子供だけだし、パスタにしようかな。あとは、野菜サラダとコンソメスープかポタージュ…)
本当なら、結婚記念日の今日は、家族みんなで外食でもして、まだ子供達も小さいから、そらさんとデートなんて無理だけど、子供達が寝たあと家でゆっくりお酒でも飲みながら(そらさんは少しだけ)おしゃべりして、ささやかに過ごすのが定番。
でも、それもそらさんが出張から帰って来る明日までお預け。
(今年は10年目だし、いつもと違う事したいな)
そういう思いはあるものの、やっぱり子供達の事もあるし、特に何がしたいか思い付かない。
そんな事を考えながら、ミートソース用に玉ねぎをみじん切りにしようとまな板にのせた時だった。
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