Web拍手用

□すいーとちょこれいと。
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13日の夜
モビー号に漂う甘ったるい匂い
誰がキッチンでその匂いを出しているのか確かめなくても分かっていた
そしてその甘い香りが誰の為なのかも

「いいよなぁ…エース隊長は…」

二番隊のクルー達はため息混じりに呟いた

明日はバレンタインデー
女の子が男の子に気持ちを込めてチョコをプレゼントする日
義理チョコやら友チョコ何かもあるが…
男の考えることは一緒


どうしたら好きな女からチョコを貰えるか、だ


「ま、おれ達には関係ない日だけどね」

「飲んで忘れよう…」

「…ひなた、おれにくれないかなぁ??」

モビー号はチョコの香りと酒の匂いとクルー達の嘆きで夜はふけていく





14日朝
限定100名ひなたのチョコ付きセット


とふざけたタイトルが付いたメニュー表がテーブルに置いてあった

「なんだねい………これ??」

徹夜明けの頭は働かない
疲れた顔でサッチに尋ねた

「そのままだよ?ひなたの手作りチョコ付きだ」

おれは周りを見渡す
トレーに乗ったハート型のチョコが目に入った

「…………じゃあ、それ」

それをくれよい…と言い掛けたおれの言葉を遮る
サッチは笑顔で告げた

「もう完売だ」


こいつはわざとだろうねい??


おれはため息をついた
当初の目的通りコーヒーだけ頼む事にする


やはり
少し眠ろう…



ひどく疲れた





ふらふらする足どりで自室に戻ると部屋の前には膝を抱えて座るひなたの姿があった
おれに気づくと笑顔で手を振ってきた


今日もかわいいねい…


口元が綻び、つられて笑顔になる
一気に疲れが取れた気さえする


「徹夜したの?」

ひなたは立ち上がるとパンツの後ろをパンパン叩き、汚れを払う

「顔色よくないよ」

おれを見上げるひなたは心配そうに首を傾げた

「…………これから少し寝るよい」


だから心配するねい


おれがひなたの頭に手を乗せ、ゆっくりと髪に触れるとひなたは照れたように微笑んだ

「あ、あのね!マルコに渡すものがあって…」

持っていた紙袋から一つの包みを出す
透明な袋に入ったチョコレートだった

「いつもありがとう」

おれの胸に押し付ける様に渡された包み

「………ありがとねい」

頬が赤くなるのが自分でもわかる
高鳴る心臓
この場でガッツポーズをして大喜びしたい位にテンションマックスだ

「大変だったろい?…随分作ったみたいだねい?」

「うん!オヤジさん、隊長達にヒスイとモルガにも。後は二番隊のクルー達でしょ…」

ひなたは指を折りながら数える

「セット分の100個もだしねい…」

「セット??」

「限定100個ひなたのチョコ付きセット」

ひなたは首を傾げた

「えっ??」

その反応におれも思わず首を傾げた

「ああっ!」

暫くしてひなたはポンッと手を叩く

「それってハート型だった??」

「ああ…」

頷くおれにひなたはクスクス笑い出した

「それはサッチの作ったチョコだよ」

「は…………い?」

「んーと、私の用意したチョコだけど型に流して作ったのはサッチなの」

ひなたはおれの手の中の包みを指差す
指差すチョコに視線を移す

「私のはハート型じゃないもん」

透明な包み紙から覗くチョコレート

「ハート型だと食べた時割れちゃうでしょ?何か嫌なんだよね…」

「ああ…」

「だから、大好きなほ…「ヒトデかい」………星形」

ひなたは大きな黒い瞳でうるうるとおれを見返した

「もう………ヒトデでいいよ……」

シュンと肩を落としひなたはゆっくり休んでね…と告げると踵を返して去っていく


大失態…だ


上がったテンションも駄々下がり↓↓↓


手の中のチョコに視線を落とす


「どう見ても…ヒトデだねい??」

クス…と口から笑いが漏れた







*************


「おうっ!ありがとな、ひなた!!」

ひなたから包み紙を受けとるエース
それに視線を落とすとニッと口角をあげた

「ホントお前って星、好きだな!!」

「………皆、ヒトデだって」

エースは項垂れるひなたの頭をワシャワシャと乱暴に触れる

「大丈夫だ!おれには星に見えるぞ」

ニカっと笑うエースにひなたも笑顔を取り戻した

「星はおれとお前にとって特別だから、他の奴等には分からなくていーんだ」


おれとサッチは二人に見つからないように覗き見た
エースはあれを見て何て言うか確かめたかったのが理由だ
他の誰に聞いてもあれはヒトデだった

「やっぱり…エースには敵わないねい」

「あれが星に見えるのはアイツだけだ!オヤジですらヒトデって言ったしな…」

幸せそうに笑うひなたの顔が視界に入った
つられて口元がにやけるのが分かる



おれは…


何よりもあの子のそんな顔を見るのが好きだったりする


それが自分に向けられたものでは無くても…


おれを幸せにする






「ーってか、サッチ…。あのハート型チョコお前が作ったらしいねい…」

「ひなたからって言った方が皆の笑顔見れるじゃん??」

「だからってねい………」

「おれはただ、皆の笑顔が見たいんだ!!だから………お願い………マルコ様!!」

「………秘密にしてやるよい」




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