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□『赤髪の娘』
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二年前のあの日
14歳のあたしは彼に救われた
シャボンディ諸島の『人間オークション』であたしは売り物だった
あたしの首には生死問わずの懸賞金がかかっている
触れると液体を沸騰させる『フツフツの実』を食べた能力者
人間の身体の60%は水分で出来ている
あたしの能力はその人間の身体の水分を沸騰させ、死に至らしめる事が出来る
人間兵器とも呼ばれていた
物心つく頃には一人だった
いくつもの海賊船を渡り歩く、一匹狼
あたしの唯一の出生の手がかりは一枚の写真
生まれたばかりのあたしを抱く、『赤髪』と呼ばれる海賊とその隣で寄り添う女性

あたしの通り名は『赤髪の娘』

本当か嘘かそんなのは知らない
そんなことはどうでもいい

彼に近付く為だったら何でも出来る
嘘だって平気でついてやる
利用できるものは利用してやる

それがあたしのやり方だ

『後悔しないように』それがあたしの信念だから




『出会いはゴーインに☺』




あたしは二年、ここで待っていた
ここで彼を待っていた

一目惚れ、だった
助けてくれた彼の事を後で聞いた
その名はモンキー・D・ルフィ
ルフィの姿を初めて見たのはマリンフォードの頂上決戦
シャボンディ諸島の大型モニターに映った、エースを助けるためマリンフォードに乗り込んだ彼の姿に胸が高鳴った
恋はするものではなく堕ちるものだと初めて知った

大好きだからそばにいたい

どう思われてもそばにいたいから
近づいた

傷付く事を怖がっていたら
近付けない


手の中の一枚の写真
『赤髪』の被っている麦わら帽子がルフィのと一緒だった
一か八かのカケだ

麦わらの一味がサニー号に揃った頃を見計らって、あたしはサニー号へと乗り込んだ

「ねぇ、ルフィ?……あたしも船に乗せてよ?」

「……誰だ?おめェ??」

「あたしはシャンクスの娘、ティアナ!」

「はぁ??」

ティアナは深く被ったフードを取った
露になる赤い髪
頬にかかる短い髪と後ろに三つ編みをした長い髪が揺れる
三つ編みにした毛先には黒い蝶の飾りがついていた
真っ黒な大きな瞳でルフィを見つめる

「あんたに付いていけば、いつかシャンクスに会えるでしょ??」

「んー??……そうだな、これ返しに行くしな」

ルフィは麦わら帽子に触れるとししし…と笑う
麦わらの一味は二人のやり取りと静かに見守っていた

「……仲間にしてとは言わないから…ただ…」


ただ……


そばにいさせて、ルフィ?


ルフィに聞こえるか聞こえないか分からない位の小さな声で呟いたら、涙が溢れてきた
それを気付かれないように俯いたが、涙が止まらなくてゴシゴシ顔をこすったら、ぱふっと頭に手が乗った感覚がした

「……?」

「仕方がねェな!泣くくらいシャンクスに会いてェなら、連れていってやる」

ティアナがゆっくり顔を上げるとそこには眩しい笑顔がある

「……そんなに、簡単に信じていいわけ?」

ルフィの笑顔が眩しすぎた
キュッと胸を締め付けられ、ティアナは頬を赤く染めるとルフィから目を反らし、嬉しくて跳び跳ねて喜びたい心境をぐっと押さえた

「レイリーのおっさんが……」

「「「ルフィっ!!」」」

「えっ??」

ティアナが首を傾げると慌てた様子の麦わらの一味がルフィの口を押さえた

「何でもないのよっ!……えっとティアナだっけ?あたしはナミ。よろしくね!!」

あははは…とナミが笑いながら、暴れるルフィの頭にげんこつを落とした

「………ってェな、ナミ!別に隠すことじゃねェだろっ!!」

「うるさいっ!あんたは黙ってな」

再びげんこつを落とされたルフィは唇を尖らせた

「………そっか」

ティアナの言葉に一斉に視線が注がれる

「……あたしがここに来るのレイリーから聞いてたんだね」

俯きながら髪の毛をくしゃりと握りしめたティアナから笑いが漏れた


……バカみたい


ずっと、ずっと考えて
やっと思い付いたルフィのそばにいる為の口実


それでも……


「訂正させて」


潤んだ瞳で真っ直ぐルフィを見つめて、ティアナは大きく息を吐いた

「シャンクスに会いたいっての只の口実。………本当はただ、ルフィのそばにいたいだけなの」

「…………お、う?」

「それでも、船に乗せてくれる??」

首を傾げ、はにかんだように笑うティアナにルフィは迷わず大きく頷くと、くるりと向きを変えて、両手を大きく上に伸ばすと「出港だぁぁ」と叫んだ
ティアナはその後ろ姿を見つめながら


ああ…
やっぱりルフィを好きになって良かった


と思わずにはいられなかった










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