+Novel・@+
□Blue Bird
2ページ/8ページ
今まで遊びに行っていた家が今日から帰る家になり、名前も田沼和貴から今村和貴になった
母親の妹にあたる、みち子の養子として引き取られた和貴は、いつまでも暗く落ち込んではいられなかった
和貴のために綺麗に片付けられた部屋はもともと、みち子の娘、小春が使用していた部屋だった
小学6年生になった小春は彼女なりに気を遣ってくれたのであろう
「和ちゃん受験生だもん、一人になりたいでしょ?それにわたしは勉強しなくてすむし…あ。今のはお母さんには内緒ね」
小春は口元に人差し指をあてると、ぎこちなくウインクをした
学校は中学3年生という事もあり転校はしなくてすんだ事は幸いだった
これから片道一時間はかかる距離を自転車で通うことになる
塾も今まで通りに通わせてもらえたし、授業料が高い私立の高校の受験も快く認めてもらえた
いつもと何もかわらない
学校に行けば友達がいる
家に帰れば優しい今村家の家族がいる
―ただ
両親がいないだけ…
ただ、それだけだ