+Toi et moi+

□2 秘密の森
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時折クロードは振り向き、ココアとの距離が広がらないように気を付けていた

魔物討伐が禁止されているこの国で、一人の少女が町から離れ、あの森の中でいつ来るかわからない人間を待つ
いくら女王の命令であってもその覚悟は驚愕するものだ

クロードはココアが追い付くまで立ち止まり、そして観察していた
背はセレナよりはるかに高いし体格も良い
色白で細身のセレナに比べるとココアの方が見た目的には強そうに見えなくもない
ただ、武器になるものも持っているようにも、腕力があるようにも見えない

「…なぁ、一つ聞いていいか?」

小走りに駆け寄ってくるココアは息を切らしながらクロードを見上げる

「はい。なんでしょうか??」

「さっきアイツがここら辺には魔物は出ないと言ってたが…」

「…そうですね」

ココアはクロードから目を背けるとクロードを追い越し、そのまま町へと歩いていく
クロードはため息をつくとその後ろを追いかけた
暫くの沈黙の後、ココアは真っ直ぐ町を見つめながら重い口を開いた

「……クロード様は秘密はお持ちですか?」

クロードは首を傾げ、生きていれば一つや二つはあるだろう、と答えた
ココアはそうですね、と呟いた

「私は幼い頃、魔物に襲われた事があります。その時セレナ様に助けて頂き、セレナ様が魔石使いだと知りました。この国には魔物に手を出してはいけない条例があるため、ほとんどの人間は魔物と出会うとその命は無いもの…と教えられてきてます」

「………」

ココアは立ち止まると振り返る

「私のこの命はセレナ様のものです」

胸の辺りで手を組み合わせココアは瞳を閉じる

「…秘密は口に出してはいけない」

「えっ?」

クロードが首を傾げるとココアはまぶたを開け、茶色の瞳を真っ直ぐクロードに向けると小さく頭を下げた

「申し訳ありません。私からは何も言えません」

「………そうか。仕方がないな」

クロードは肩をすくめ、ため息を一つつくと川沿いを再び歩き始める
ココアはその後をうつむきながらついていった


クロードとココアがそれ以上会話をすることは無く、重たい空気の中、待ち合わせ場所の馬屋に着いた
馬屋の前ではオーランが地面にあぐらをかき頬杖をついてふて腐れた顔でクロードを迎えていた

「遅ぇ………」

口を尖らせオーランはグチグチと嫌みをこぼすが、クロードの後ろから付いてきたココアを見つけると表情は一変
嬉しそうに駆け寄るとココアの右手を握りしめ、その甲に口づけをする

「お名前、教えていただけますか?」

口角をキュッと上げ、優しい瞳でココアを見つめる
ココアの頬は赤く染まる

「………ココア、と申します」

「ココア…なんて可愛らしいお名前だ。あなたにぴったりですね」

「………うわっ、出たよ」

荷物を馬に乗せ、旅の準備を進めていたレオンは眉間にシワを寄せた

「黙れ、レオン」

レオンを一瞥し、再びココアに優しい瞳を向ける

「…もしかして、兄貴の妃候補??」

ココアは首を傾げる
クロードは黙れ、とオーランの頭を小突いた

「候補じゃないならおれのにしてもいいって事だろ?」

「あ…あのっ!私は…」

「………まぁ、それを決めるのはおれではないが」

クロードはココアをチラリと見る
ココアはモジモジと頬を赤くしたまま俯いた
オーランはココアの顎をくいっと持ち上げ、顔を近づけた

「ココア、一緒に旅をしませんか?」

オーランは口説く為の決め台詞をはいたが、同時にレオンが高笑いを始めた

「レオンっ!ふざけるな!!」

ココアの顎を持ち上げたまま、オーランは振り向くとレオンを睨み付けた

「ご、ごめんなさいっ!!」

ココアは両手に力を込め、オーランの身体を押し返した

「コ…ココア?」

「私……女ではありません!」

「は…………い?」

ココアはにっこりと微笑む
オーランだけでは無くクロードも口をだらしなく開け、イケメンが台無しになっていた
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