+Toi et moi+

□3 旅は道連れ世は情け容赦なし
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あっ………
また、この夢だ


そんな他人事みたいに客観的に感じた
夢だとわかっている
だけど息苦さや、頬を伝う涙や、手の震えはやけにリアルだ
そして自分の姿がとても小さな女の子であるのも毎回一緒だった

そこに広がるのは永遠の闇
泣いても叫んでも声は誰にも届かない
走っても走っても脱け出せない黒の世界
そこには誰も居ない
いや……
誰か居る、のだ
それから逃れる為、ひたすら走る
ただ、真っ暗なそこを走る、だけ


ここはとても怖い


不意に何かに足を取られ、転んだ
じわじわと身体が吸い込まれていく
底無し沼に引きずり込まれるように、もがけばもがくほど身体は闇に深く持っていかれた
必死に手を伸ばすもその手を掴むものは…

「…セレナ?」

伸ばした手を掴むものに名を呼ばれた

「やっと………、見つけた」

くしゃりと笑う笑顔がそこにはある
小さな身体を抱きしめた男は闇から逃れる為
に走る


光の方へ…
光が指す方へ…


耳元で「だいじょうぶ」と言う呟く声が聞こえた
それはとても優しい声だ
胸元をキュッと握りしめ、その逞しい胸に顔を埋めた


初めて感じた、暖かい…温もり


「ああ………。あの子に良く似ている…」


太陽の下
見上げた男の顔は眉毛をハの字に下げ、強面の顔には似合わない大粒の涙を両目から流していた

「………泣かないで」

そっと手を伸ばし、そっと頬に触れると、その手をゴツゴツした大きな手がギュッと握りしめてきた

「もう………一人にはしない」


逃げよう……
地の果てまで


闇が届かない場所まで…
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