+Toi et moi+

□4 あるがままであること
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「今のは、何者だったのでしょうか?」

レイシーは一つ息を吐き、構えていたままのボーガンをゆっくり下ろす
オーランはレイシーの呟きに我に返り、直ぐさま馬車に戻ると、中にいるココアに声をかけた

「…お城で何かあったのではないでしょうか?」

ココアの不安げな声が響いた

「………」

コトリ、と音がしてレオンは視線を落とした
足元にはレイシーが放ったボーガンの矢が落ちていた

「アレン、さん?」

アレンは真っ直ぐ、男が乗ってきた船へと向かっていた
湖はまだ濃い霧で覆われている
船で渡るには無謀過ぎる、としか言いようがない

「む、無茶ですよっ!」

レオンは慌ててアレンの後を追う
レオンの声にオーラン、レイシー、ココアの三人は顔を見合せた
レイシーはため息をつくとレオンに続きアレンの後を追った
ココアはオーランに手を借り、馬車の荷台から降りた

「セレナが心配なのはわかりますけど、この霧じゃ方向見失いますってば!」

アレンは軽々と船に乗ると振り返った
口角がニヤリと上がる

「……無謀は承知」

「………」

「今、俺が守るのは……」

「み、皆様!上を見てください!」

ココアが空を指差した
霧がゆっくりと晴れていく
傾きかけた太陽が湖を照らした
霧で全く見えなかった湖の中央には町が姿を表す

「な、なんで?」

「…皆、船に乗ってくれ。城に急ごう」

アレンから笑みは消えていた
レオンは慌てて船に乗る

「…俺たちも行こう」

オーランがココアに声をかけると船へと向かって、小走りに駆け出した
ココアはオーランの後に続いたが思い出したかのように、馬車へと戻ると荷台からカバンを下ろした
振り返ったオーランは後ろにいるはずのココアがまだ馬車の所にいることに首を傾げた

「……?ココア、早く来なよ!」

「あ、はいっ!すみません」

「置いていっちゃうよー」

「ええー、待って下さいっ!」

ココアは慌ててカバンを背負うと走りだした
オーランは愉しげに笑う
そんな二人のやり取りを見ながらレイシーはため息混じりに呟く

「……オーラン様は好きな子に意地悪するタイプでしたか」

「な、何言ってんの!…んな訳ない」

「…そうですか?私の勘違いでしたか」

「そ、そうだよ!…さあ、早く出発しよう!」

オーランはどこかギクシャクした様子で船に乗り込んだ
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