+Toi et moi+

□4 あるがままであること
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セレスタント地方
ジャスティス国

城のあらゆる場所に飾られた肖像画や写真の王女マーガレットはとても美しかった
綺麗にたてロールに巻かれた金色の髪に蒼い瞳。瞬きするたびに『バサリ』と音がしそうなほど長い睫毛。ピンク色に色づいた、プックリと厚みのある唇
しかし今はその肖像画や写真には白い布が被せられ、見ることは出来なくなっていた

マーガレットの華奢な身体を包み込む色鮮やかなドレスやその美しい姿は、部屋の半分を覆う薄いピンク色の布が隠していた
もう、何年も前からマーガレットは隔てられた布から先に出ることはない
彼女に近づけるのは、彼女のお世話をするメイドが数名のみ
父親である国王マロニエすら部屋の中に閉じ籠ってしまって以来、姿を見ることはなかった

「お父様、おはようございます」

部屋を訪れたマロニエにマーガレットは布越しに挨拶した
いつもより明るめの声にマロニエの強面の顔は一瞬で緩んだ

「何か良いことがあったようだね?マーガレット」

「ええ……」

マーガレットはコクりと頷く

「クロード様がキャンベル王国を訪れているそうです」

「ああ……今はその話題で持ちきりだね。……だが、それがどうした?」

マロニエは首を傾げる
部屋の隅ではクスクスとメイド達が楽しげに笑っていた
そちらに視線を移すとメイド達は姿勢を正し、口を閉ざした

「………私、このお写真を頂いてから」

マーガレットの手にはウォーム大国から届いたクロードのお見合い写真が握られていた

「クロード様をお慕いして………」

布の向こうで、俯くマーガレットの姿が見えた
こちらからはその姿を見ることは出来ないが、マーガレットの頬は真っ赤に染まっているだろう、とマロニエは感じていた

「マーガレット……」

マロニエはゴホン、と一つ咳をし、娘に伝えなくてはいけない事を口をモゴモゴさせながら、重い口を開く

「とても言いにくいが………。クロード王子には決まった方が出来たらしいぞ?」

マロニエの言葉にマーガレットはクスリと笑った

「知っていますわ。………でも、そんなこと関係ありません」

写真を胸に抱え、マーガレットは決意をマロニエに告げる

「聞いた話によると、相手の方は城下の娘……だそうです。そんな女性はクロード様には相応しくありませんわ」

マロニエはゴクリ、と息を飲んだ
その音が意外にも大きく、マーガレットはその音に反応し、声を出して笑った

「クロード様は私を選んでくれますわ、お父様………。それに………」

「…………?」

「クロード様なら私に掛けられた『魔女の呪い』を解いてくれると思うの」

マーガレットは写真を胸に抱きしめると楽しげに笑った

「……お待ちしています、クロード様」




早く
私に会いに来て?







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