+ パラレルワールド「ONE PIECE 」+

□1 あいたいひと
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息苦しさは無かった
私はこの海の一部になったのだろう
見上げた水面から太陽がキラキラ光って幻想的な風景を作る
目の前を黒い影がよこぎった
その正体は知ってる

「マンタ…」

手を伸ばすと身体をすりよせてきた
体長8メールを越えるオニイトマキエイ
幼い頃から、毎年この子に会いに来てた

「会えてよかった」

「私はここで死んじゃうから」

泳ぎには自信があった
この所色々ありすぎて疲れていたせいだろう
ダイビング途中で足がつる失態を犯し、突然の大きな波に流され、漂流して何時間?
身体が鉛のように重くなり、私の身体は海の底に引き込まれていった

「大丈夫…もう、苦しさも感じない」

マンタは何度も身体をすりよせてくる

「このまま…」

瞳はゆっくり閉じていく
真っ暗な世界に引きずり込まれてく

「眠らせて…」

顔にマンタの身体が当たって、私は重くなった瞼を開けた
目の前にマンタのお腹が見えた
口がパクパク動く

「ほんとうにいいの?このまま、しんじゃってこうかいしない?」

「もう…私には何にもないもの」

ここ数日で起きた現実を思い出し、瞳から涙が零れた

「マンタ…私は誰かに愛されてたかなぁ…」

「もとめるんじゃなくて、だれかをあいしてみたら??」

「愛す??」

「うん。あ…そろそろじかんがきたみたい」

マンタが私の周りを旋回すると渦が起きた
身体がその渦に巻き込まれていく

「マンタ!!」

手を伸ばしても届かない

「さあ、ひなた。あいたいひとのなまえをよんで!」

「え?マンタ!分かんない」

「かれにきこえるぐらい、おおきなこえでさけぶんだ!!」

マンタの姿は見えなくなった
私は渦に呑み込まれ上手く息が出来なくなっていく
意識が遠退いていく意識の中で、会いたい人の顔が浮かんだ

(会えるなら…彼に…)

でもそれは叶わぬ事だと知っている

(…ス)

息が出来ない
ゴボゴボと口から空気が漏れていく
最後の一息で彼の名を叫んだ







「エースーーーーー!!!」
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