ねむり姫の永夢
□懐かしき歌声
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―――――。
聞こえる
―――、―――。
聴こえる。
――――。
歌が、きこえる。
それがなんの歌なのか、どんな歌詞なのか、分からない。
ただ、懐かしく、切なく感じる。
歌を歌っている子。
艶やかな黒髪が光を受け金にも見えるから不思議だ。
子供が振り返る。
黒髪が揺れる。
その子は嬉しそうに、泣きそうに、楽しそうに、
泣きそうに、笑った。
◇◇◇
「……ぅ…」
チュンチュン。
雀の囀りがかすかに聞こえる。
目覚めたばかりの雲雀は不機嫌そうに眉を寄せた。
襖から朝日が零れ眩しい。
手で目を覆いながらむくりと雲雀は起き上がった。
目覚まし時計を見ればセットした時間より十数分早く起きたようだ。
雲雀は気だるげにため息をつきゆっくりと立ち上がった。
「そこの君、その服装校則違反だよ」
「げっ」
「君、そのゲーム機壊されたいわけ?」
「す、すみませんっ」
「没収」
「あぁっ」
取り上げたゲーム機を近くにいた風紀委員に渡し雲雀はこっそりため息をついた。
今日は月に一回の生活点検と服装点検の日だ。
だと言うのに校則を守る気配を見せない生徒に苛立ちを覚える。
ちらりと横目で見れば校舎の影に隠れながら何かを囁きあっている生徒達。
きっと自分の陰口でも言い合っているのだろう。
そんな幼稚な考えしか思い浮かばない奴等を鼻で笑い雲雀は応接室に向かった。
もう生活点検、服装点検は終わったのだ。
授業が開始されるのを報せる音を聞きながら雲雀は応接室の扉を開けた。
「ふぁ〜ぁ…」
たまっていた書類を全て終わらせ雲雀は欠伸を漏らした。
腕を伸ばし凝った肩などを解していく。
ふと机に無造作に置いた携帯がチカチカと光っているのが目に映った。
「……ハァ」
来ていたのはメール。
相手は勝手に自分の師だと言い張る気にくわない男からだ。
文面も慌てて打ったせいかそれともそれが素なのかうち間違えがみえる。
「今日来るねぇ…」
携帯を閉じ鞄に投げ入れ帰りの支度をする。
彼が来たら久々に戦える。
それが楽しみでならない。
自分が本気で戦える数少ない相手。
鞭を自在に操り何百の部下を従える男。
跳馬ディーノ。
そういう点では雲雀はディーノの事を認めていた。
「ヒバリ、ヒバリ」
いつもより慌てたようなヒバードの声に眉をよせる。
どうした、と問おうとした時ガラスが割れる耳障りな音がすぐ後ろから聞こえた。