ねむり姫の永夢

□記憶の中の少女
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――きれい


舞い散る紅葉を眺めながらその子は笑った。


――きれい、きれいね。きょうや


楽しそうに笑うその子をきれいだと、思った。

そして、その子の名を―――。


「……あれ?」

名が、思い出せない。
いや名前だけじゃない。
顔も思い出せない。

「……?なんで」

どうしてだろう。
とても、とても大切な事のような気がするのに。

「………」

思い出そうとした雲雀だが途中で目を細めた。

歩いていた道を曲がり徐々に人気のない道へと行く。
途中胸ポケットにいたヒバードが空へと飛んでいく。

「出てきなよ」

トンファーを構え雲雀は鋭く言った。

その言葉が合図かのようにぞろぞろと人が出てきた。
見た目からして外国人だろう。
皆銃等で武装している。

雲雀は獰猛に輝く目を細め口の端をあげる。

「咬み殺す」




「ふんっ」

不満そうに鼻をならし血の付着したトンファーを振るう。
血が地に染まる。

「たわいもない」

雑魚が群がるだけ群れて吐き気がする。

不機嫌そうに呟いていると携帯のバイブがなった。

「はい」

《あ、恭弥?》

「なに?」

能天気な声を聞きさっきとは違う苛つきを覚える。

《いやな?恭弥に伝える事があって》

ディーノの声が真剣を帯びる。

《今さ、キャバッローネと敵対しているマフィアがいてさ》

「……そういえば君、マフィアのボスだったね」

ついつい忘れていた。

《酷いな、おい……まぁそれでなどこからか俺とお前が師弟の関係だっていう情報を掴んだらしいんだ》

「僕が師匠かい?」

《あまりないお前のボケにどうツッコミを入れたらいいかわかんないけどそれ酷くね?》

「で?情報が掴まれてなに?」

《お前なぁっ……それでそいつらお前を人質に、とか考えそうだから気を付けよ》

「ふーん」

ちら、と雲雀は倒れている奴等をみる。
この時代拳銃を持つことは難しい。
だとするとこいつらは。

「もう僕襲われたよ」

《まじで!?》

「返り討ちにしたけど」

《……さっすが恭弥》

安心した。
そう言ってディーノが笑ったのが電話ごしでわかった。
本当にこの自称師匠を名乗るこの男は自分を子供扱いし、心配しすぎだと思う。
雲雀の無事も確認しディーノは電話を切った。

「はぁ」

携帯を閉じ空を見上げる。
空はすっかり暗闇に染まっている。
風が吹き紅葉が一枚はらりと落ちた。

――きれいね

「……誰?」

記憶の中に少女が一人。
でも誰だか思い出せない。

「君は……誰?」

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