REBORN!!短編

□ありがとうと、君に
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六月九日。
今日は、君にとって特別な日になるように、祈っている。



「骸ー。いるー?」

黒曜ランド。骸達が拠点に使っているそこに綱吉は来ていた。
手には普段買わないような、高いチョコレートがある。

「なんですか。せっかく気持ちよく寝ていたというのに…」

黒曜ランド内を歩き、骸が普段いる部屋に行けば、骸はソファーから身を起こし言った。
骸の様子に綱吉は苦笑した。
きっとその様子じゃあ今日が何の日か忘れているだろう。

「骸、誕生日おめでとう」

はい、とチョコレートを骸に手渡す。
骸は形容しがたい表情で受け取った。

「……どうも」

「もしかして……、誕生日間違えてた?」

「いえ、まぁ。あってますよ」

歯切れの悪い骸に綱吉は首をかしげる。

「骸?」

「いや…、今日が誕生日とは限らないもので」

「は?」

六月九日が骸の誕生日だと聞いたが。
そして骸も今日が誕生日だと肯定していたではないか。

「六月九日というのはパスポートなどを作る際に誕生日が必要だったので、適当に決めた日なんです」

だからたしかに今日は誕生日だが、本当の誕生日とは限らない。

「……マジか」

「マジです」

そして骸は困ったような笑みを浮かべた。

「すみません。せっかく祝ってもらっておきながら…」

「まぁ、いいか」

「はい?」

想像していたのと反応が違い、骸は首をかしげた。
綱吉は何かを自己解決したらしく頷いている。

「だってさ、ようは骸が産まれてきてくれたことに感謝するってことだからさ。……本当は産まれた日がいいんだけど、うん」

綱吉は一つ頷き、笑った。

「たとえ、今日が本当の誕生日じゃなくても、今日が骸の誕生日。骸が産まれてきてくれたことに感謝する日なんだ」

そう、笑顔で言う。
その笑みはまるで、そう。
すべてを包む大空のような、笑み。

「だからさ、いいんだよ」

「……無茶苦茶な考えですね」

骸は呆れたように言った。
綱吉は照れたように頭をかく。
そして、笑みを深くして言った。

「骸、誕生日おめでとう」

それに骸は少しはにかんだ。

「誕生日、ありがとう」

産まれてきてくれて、ありがとう。


君が産まれてきてくれたことに感謝して。


綱吉は言った。



ありがとうと、君に
(ありがとう。産まれてきてくれて)

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