ねむり姫の永夢
□失楽園にアリスはうたう
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「じゃあね」
風と共に消えて行く二人。
ここはアリスの夢だ。アリスの思うがままにできるアリスの世界。
「雲雀さん!!」
「恭弥!!」
手を伸ばしたその先に、雲雀はいなかった。
「ラビィ、でしたっけ?」
骸は白い男に声をかけた。
ラビィは悲しそうにほほ笑んでいる。
「君はこの事を知っていた」
「君もこの事を知っていた」
「こうなることを、知っていたんですか?」
骸の問いにラビィは答えることなくただほほ笑むだけだった。
「僕の願いはただ一つ」
ラビィの姿が薄れ、消えて行く。
「アリスが、寂しい思いをしなくてすむようにすること」
それが、自分の唯一の存在理由なのだから。
◇◇◇
「……ぅ」
「十代目!」
「ツナ!!」
瞼が震え、綱吉が目を覚ました。
それに獄寺と山本はほっと息を吐く。
見れば骸とディーノ、ユリウスも目を覚ましていた。
「どうだったんだ、ツナ」
リボーンは綱吉を見上げながら訊いた。
その質問に綱吉は言いにくそうに、視線をあちこちに送った。
それに不審に思い、リボーンはディーノを見る。
ディーノもまた言いにくそうに、ユリウスを見た。
教え子二人の様子からして、雲雀の救出に失敗したのだろう。
だが、それにしては二人の様子がおかしい。
「はっきりしやがれ」
何もわからない。
わからないから苛立ちも募る。
リボーンははっきりしないツナに銃口を向けた。
「ひぃぃ!?銃向けんなって!!」
「はっきりしないお前が悪い」
「だ、だって…!」
「永夢病の原因はユリウス・ダンヒーラの妹、アリス・ダンヒーラですよ」
骸の言葉にユリウスは唇を噛み締めた。
そして新たにわかった情報にリボーン達は驚いた。
「アリスは永夢病とやらに罹っていたのではないのか?」
笹川が首を傾げながら言った。
そうだ、ユリウスはそう言っていた。だからユリウスは同じ永夢病に罹った雲雀のもとに来たのだ。
手がかりを探して。
「だから、彼女自身が病気の発症源なんですよ。すべての原因はアリス・ダンヒーラだ」
「骸!!」
あまりの言い方に綱吉は責めるように怒鳴った。
それを骸は鼻で笑い、受け流した。
「事実です」
そう、それが事実。だからユリウスは言い返せないのだ。
「…今頃、アリスと恭弥以外の子どもは目が覚めていると思う」
ディーノは疲れたように言った。
アリスは返す、と言っていた。なら、子ども達は目が覚めているだろう。
だだ。
「こっから、どうすっかな…」
唯一の望みが絶たれた今。
雲雀を救い出す方法が思い付かなかった。