ねむり姫の永夢

□失楽園にアリスはうたう
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声がした。知っている声。
その声の持ち主は。

「小動物に…、跳ね馬…?」

なぜ、ここに彼らがいる。
その疑問を口に出そうとした瞬間。
パリン、と硝子が割れる音がした。



子ども達を囲っていた膜がひび割れ、割れる。
キラキラと輝きながら散る欠片はまるで雪のようだ。

「恭弥!!」

呆然と見上げる雲雀にディーノは手を伸ばした。
雲雀はそれを不思議そうに見つめる。

「恭弥、帰ろう」

不思議そうに見つめる雲雀にディーノは言った。

「頼むから、夢から覚めてくれよ」

夢。
そうだ、ここは、夢の世界。

「ゆ、め…」


――君にしよう。君は優しいだろうから


――あの子を、よろしくね


昔の話だ。
唐突に思い出した。
幼い頃、父に着いていき、名古屋に行ったことがあった。
これは、その時に言われた言葉。
そして、その子の名前は。


「……アリス」


昔、そう昔一緒に遊んだことのある子。
気まぐれでそばにいて上げた子。
その子はいつも一人で。
その子はいつも泣いていて。
だから、僕は。


「きょーや」


甘い毒を含んだ声音が雲雀の名前を紡ぐ。
振り替えれば無邪気な笑みを浮かべたアリスが側にいた。

「ダメだよ」
 
アリスは雲雀の手を握り、言った。

「ずっと、一緒にいるんでしょう?」

異様なほどに澄んだ瞳が雲雀を射抜く。

「アリス!!」

ユリウスは叫び、アリスの手を取ろうとした。
やっと会えた。
例え夢だとわかっていても、それでも。
大切な、妹をようやく見つけた。

「触らないで」

ユリウスの手が見えない壁に弾き飛ばされた。
驚きで目を見張るユリウスにアリスは嘲笑を浮かべた。

「あーあ。せっかく、楽しかったのに」

周りの子ども達はまるで無重力空間にいるかのように浮いていた。
それを見て、アリスは言った。

「兄様、子ども達は返してあげる。けど、恭弥はダメ」

それにユリウスは目を見張った。
何を言っているのだろうか。

「それって、つまり…」

綱吉が自分の考えを確認するかのように、言った。

「君が、すべての原因?」

それにアリスは笑みを浮かべた。
それが肯定だとすぐに気づいた。
つまり自分達はアリスの手のひらの上でまんまと踊らされていたわけだ。

「な、ぜ……」

呆然とユリウスは呟く。

「なぜ?そんなの」

アリスがユリウスを睨み付ける。

「兄様が一番よく知っているはずよ」

風が起こった。
下から吹く風は雲雀とアリスを包み込む。
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