ねむり姫の永夢
□希望狩りを始めましょう
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忌々しそうに骸は言った。骸が無理ならクロームもおそらく無理だろう。
「くそ、じゃあどうしろってんだ」
「とりあえずそれはここを無事に切り抜けられたら考えようぜ」
舌打ちし、吐き捨てる獄寺に山本が時雨金時を構えながら言った。
「「やぁやぁ」」
ウサギが三日月に口を歪ませながら言う。
真っ黒な瞳がディーノ達を見つめている。
鋭い歯がカチカチと音を鳴らす。
「「やぁやぁ」」
ウサギが高く高く跳躍する。
四方から襲い掛かってくるウサギ。
「「やぁ、やぁ。死ぬ時間だよ」」
無機質な声は何重にも響きわたった。
◇ ◇ ◇
「見えた!!」
全力で飛んでいたため体力が少し消耗している。だが、今そんなこと言っている状況ではない。
並盛病院に近づけば悲鳴が聞こえてきた。よく見れば綱吉たちを襲ったウサギがここにもいる。
やはり、骸の読みは当たっていたと言う事か。
「クソ!!」
X BURNERを使えば一息にウサギを消滅させることができる。だがそれは、病院も、そこにいる人も巻き込んでしまう。
かといって一体一体倒していっても逆に綱吉がやられる可能性がある。数の差はどんな時でも多い方が有利なのだから。
ならまず優先すべきは雲雀の救助だろう。おそらくこのウサギは雲雀を狙っている。ならここから雲雀がいなくなればひとまずウサギも並盛病院からいなくなるのではないか。希望に近い考えだがやらないよりはましだ。
そう考え、綱吉は雲雀が眠っている病室に向かった。
ウサギが止どめなく溢れている。ウサギたちの目指す先は皆同じだ。あの子を、雲雀恭弥を捕まえるのだ。
雲雀の近くに控えていたディーノの部下は皆鋭い爪に引き裂かれ倒れている。血が流れ、このままでは死んでしまうだろう。だが、ウサギにとってそれは関係ない。
邪魔をしたのだから殺す、それだけだ。
ウサギの手が雲雀に触れようとする。
「やめろーーー!!」
橙の炎が見えた。額と拳から炎が出ている。
だが関係ない。ウサギはただ任務を完遂するのみ。
「やめろ!!」
綱吉の叫び虚しくウサギは雲雀に触れようとする。
触れさせてはダメだ。綱吉の超直観がそう訴える。
邪魔をしようと病室に乗り込めばウサギが襲いかかってくる。それを殴れ倒しながらも綱吉は雲雀に近づき、手を伸ばす。
「やぁやぁ。死ぬ時間だよ」
背中から何かが突き刺さる感触。灼熱がそこから全身に回る。
「…ぁ」
唇から洩れる小さな声。それとともに溢れる赤い液体。
白い手が雲雀に触れた。途端に雲雀の体が薄くぼやける。
「ひば…り……さ」
霞む視界。それでも伸ばしたその手はむなしく空を掻いた。
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