ねむり姫の永夢

□肯定しすぎだ馬鹿者
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十年。雲雀に提示した時間はすなわち、アリスの心の限界をあらわしていた。寂しさで心が少しずつ狂っていっていた。それが嫌で、心が狂わないよう、壊れてしまわないように自分の持てる力を使って阻止していた。それでも、所詮自分は人形、まがい物の命。できることなど、たかが知れていた。
だから捜した。彼女の心の支えになってくれる子を。優しい、心の強い子を。兄であるユリウスはアリスの寂しさに気づいてやれない、気づこうとしない。だからはなから期待などしていなかった。そして見つけた、黒が似合う少年。孤高を纏うその少年は強くて、わかりづらいが優しさも秘めている。だから選んだ、彼を。
けれど、それが間違いだったのかもしれない。
ようやくできた寂しさを埋めてくれる存在。アリスは雲雀に強く傾倒していった、それは依存だ。
そして思ったのだ、アリスは。永遠を、寂しくない、自分の為の世界を。

「こんなことしても、雲雀恭弥は君を見てくれない。こんなことしても君の寂しさは、埋まらない」

アリスは気づかないだろう。自分が本当に望んでいるものがなにかを。それに気づかない限り、アリスの寂しさは埋まらない。

「……何を言っているの?」

ラビィはなにを言っているのだろうか。寂しさは埋められる。雲雀との永遠。大好きな友達と永遠に一緒にいられる、一緒に楽しく遊んでいられる。それのどこがいけないというのだろうか。
だってあの人はいつも自分を一人にするのだ。寂しいと言っているのに、我慢を強いるのだ。暗い夜を一人で過ごした日々は数えきれない。嵐が来て、怖いと思っていても傍にはあの人はいない。怖い夜の一人で過ごしてきた。それをあの人は理解しようとしてくれない。
なら、もうあの人にこだわっていても仕方ないじゃないか。どんなことをしても、あの人は自分を見てくれないのだから。
たった一人の家族なのに、なんで。そんな疑問はもう飽き飽きするほど考えた。どんな担い手も縋っても、あの人が自分を見てくれたことはない。なら、そのたった一人の家族という肩書も意味はないのだ。
なら、自分を見つけてくれた、自分と遊んでくれた彼を選んでしまっても構わないじゃないか。もう十分寂しい思いはしたのだ、我慢してきたのだ。なら、もう我慢なんてしなくてもいいじゃないか。
そう思うのだ。
それは、他の人間からしてみれば幼稚な、自分勝手な理由。けれど、その考えを今まで正してくれる人間がいなかったとするならば。
そう考え、ラビィは目を伏せた。
自分がしなくてはいけなかったもの。それはアリスの寂しさを埋めてくれる人間を探すことではなく、あの人とアリスの間に生まれた亀裂をなんとかすることではなかったのか。今更ながらに、強く後悔する。
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