ねむり姫の永夢

□肯定しすぎだ馬鹿者
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だから、今度こそ間違えない。アリスを守る。それは自我が生まれた時からの、名前をくれたあの日からの自分の思いであり、生きる理由。覚悟なのだから。
突如、トランプが地面から舞い上がった。赤いハートが描かれているトランプはひばりの体を包み込む。見る見るうちにひばりの体を覆い尽くすトランプに、アリスは驚愕に目を見開いた。

「何をするつもりなの!?ラビィ!!」

「君から彼を遠ざける。そして、彼を解放する」

そう言ってラビィは手を振り払う。風が巻き起こり、トランプが舞いあがり雲雀と共に消えていった。
それにアリスは怒りに震えた。まさかラビィが自分を裏切るだなんて思いもしなかった。ラビィはどんなことがあっても自分の味方でいてくれるものだと思っていた。けれど、それは自分の勘違いだったのだ。
アリスを思ってのラビィの行動。それでも、狂ってしまったアリスにはラビィの真意を知る意志もなにもなかった。

「許さない……。許さない許さない許さない許さない……!!絶対に、許さない。私から恭弥を取り上げる者はだれであれ、許さない!!」

空間が、アリスの感情を表しているかのように亀裂が入り、大きく揺れた。


◇ ◇ ◇


「ツナ!!」

「十代目!!」

ウサギの形をした殺戮兵器。その包囲網をかいくぐり、なんとか並盛病院にたどり着いた獄寺達は倒れている綱吉を見つけ血相を変えた。病院内はテロにでもあったかのようにあちこちがボロボロで、あのウサギはやはり雲雀のところにも来ていたのだとすぐに分かった。そして、ウサギたちは見境なく人を襲っていたということも。
病院の惨状を見てディーノがすぐさま己の部下を呼ぶために携帯を取り出した。ロマーリオは傷の深いものを手当てしている。警察が来るのも時間の問題だろう。
雲雀の眠っていた病室。そこに血を流し、倒れている綱吉は血を流し過ぎたのか血の気が悪い。見れば体に穴が開いているという重傷を負っていた。

「ツナ!」

「待て、山本。まずは応急処置をしなければ」

晴れコテを出しながら笹川は言った。傷口にコテを当て、晴れの活性の力で傷の回復を努めさせるがいかんせん傷が深い。晴れコテでは応急処置にもならない。

「ああ、全員そろっていたな。ちょうどよかった」

切羽詰まった時にラビィの声がし、全員が声の擦る方へ視線を向けた。ベッドに腰かけるラビィは心なしか薄くぼやけて見える。

「頼みがある」

ラビィは言う。視線は真っ直ぐにユリウスに受けられていた。

「アリスを、助けてくれ」
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