REBORN!!短編

□紡いだ祝詞
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ああ、うざい。

普段思わないような言葉を心の中で吐き捨てる程に雲雀は苛立っていた。

「ねぇ」

「ん?なんだ?」

そわそわと何かを待っているディーノに雲雀は声をかけた。

「うっとおしい」

「ひどっ」

率直に自分が思っている事を言えばディーノは大袈裟に傷ついたフリをした。

時刻は5月4日、23時58分。

そんな夜遅い時間に彼は一体何しに来たのか。
早く寝たいのにディーノがいるせいで寝ることができず、それも合わせて雲雀は苛立っていた。
それを察しているはずなのにディーノはそわそわとしているだけで、出ていこうとしない。
それどころか、何の用かと問えばにんまりと笑うだけで答えない。

今なら彼を殺れる気がする。

そう思い立ち、チャキと愛用のトンファーを握りしめ、雲雀はディーノの元に向かおうと立ち上がる。

「恭弥」

不意に、ディーノが雲雀を呼んだ。
それによって振り上げたトンファーが行き場を失う。
ディーノは時計を真剣に睨み付けていた。
人を呼んだくせになんだその態度は。

よし、殺そう。

そう決心し、あげたままのトンファーを勢いよく振り下ろした。

「誕生日、おめでとう」

その言葉に雲雀は振り下ろしているトンファーを止めた。
そしてまじまじとディーノを見る。

「――って、危な!」

たったいまトンファーが自分を狙っていたことに気づいたディーノは、背中に冷たいものが流れたのがわかった。

「……なにそれ」

「へ?」

「だから、なにそれ」

誕生日おめでとう。

なぜ彼がそんなことを言うのか理解できなかった。

「いや、今日誕生日だろ?」

時刻は5月5日、0時0分。


雲雀恭弥が生まれた日だ。


それに気づいて雲雀は不思議そうに訊いた。

「まさか、それを言うためにずっといたわけ?」

「おう!」

その問いに頷くとディーノはからりと笑った。

彼特有の、人を和ませ、安心させる笑みで。


「一番に祝いたかったからな!」

それに普段の雲雀なら下らないと一蹴するだろう。
実際、雲雀は自分の誕生日を祝おうと集まった部下たちを、群れているという理由で咬み殺した事がある。

なのに。


「……プレゼントはあるんだろうね」

「もちろん!あ、今日のディナーはハンバーグな。腕のいい料理人が作るんだぜ」

「君にしては気がきくじゃない」


ディーノに、祝われて嬉しいと、そう思った自分がいて。

自分の中の何かが変わりつつある気がして。

でもそれは嫌な感じはしなくて。

むしろ心地よくて。

「まぁ、気持ちは受け取っておくよ、感謝して」

「おう!……て、あれ?」

祝ったのはディーノなのに感謝するのもディーノだということに、ディーノは首をかしげた。

その様子に、雲雀は仄かに、笑みをのせた。



紡いだ祝詞
(それは君に捧げる詩)

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