REBORN!!短編

□最期にみたもの
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ここはイタリア。
そこのとある廃工場。
ここに二つの人影があった。

「やはり来たのですね」

「ああ」

骸はほほえみ、雲雀を見つめた。
雲雀の表情は不自然なほど静かで凪いでいた。

「おやおや。どうしたのですか?雲雀恭弥」
雲雀は皮肉げに笑った。

「フルネーム…か久しぶりに聞いたね」

十年たち。
骸はいつの間にかフルネームではなく名前でみんなを呼んでいた。
それは信頼の証。
それは仲間の証。

「もう、仲間じゃないでしょう?」

「そうだね…どうして君はボンゴレを…僕たちを裏切ったんだい?六道骸」

雲雀はフルネームで呼んだ。
それはもう信頼できないという証。
それはもう仲間ではないという証。

「知っているでしょう。僕はマフィアを憎んでいることを」

「知っている…でも君は十年間何もしなかったじゃないか」

骸は笑った。
それは自嘲の笑み。

「何も“しなかった”じゃなく、“できなかった”んですよ」

「……」

「逆らったら殺される。僕だけじゃなく犬や千種までも…でも」

骸はそこで一旦くぎり息を吸った。

「でも、辛いんですよ自分が自分じゃ無くなるようでだから裏切った」

雲雀はじっと骸の瞳を見つめる。
本当かどうか確かめるかのように。

「なら…」
雲雀は抑揚のない声音で言った。

「六道骸…君を、裏切り者として…、僕が、殺す」

雲雀は銃口を骸に向けた。
骸は静かにほほえんだ。

「抵抗…しないの?」

「する理由がありませんから」

「なんで…」

雲雀の瞳が泣いてるかのように揺れている。

「言ったでしょう。辛いと。自分が自分じゃ無くなるようで、と」

「なら、抵抗してよ!!」

「辛いんですよ。君たちは優しいから、優しくて温かくて憎んでるはずなのに、一緒にいたいと思ってしまう」

「なら、裏切らなければいいじゃないか!!」

「六道骸という存在はボンゴレにとって毒でしかない」

骸は優しく言った。
わがままをいう子どもに言い聞かせるように。

「そんなこと「あるんですよ」

「殺すんでしょう?なら…早く殺してください」

雲雀は引き金に置く指に力を込める。

「楽に、してください」

「そうだね……」

「addio……

――――amare…恭弥…」

雲雀は目を見開いた。

パァン

乾いたクラッカー音が響きわたった。

骸は最期にみた表情(モノ)は


涙を流す雲雀だった。



「僕もだよ……骸」





(さようなら、好きでしたよ。恭弥)
(僕もだよ。骸)


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