ねむり姫の永夢

□たどり着いた君の行方
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規則正しい寝息。
穏やかな寝顔。
こうしてみれば、今にも目を覚めてくるように思えるが、実際は目覚めることはない。
そんな雲雀の傍らにディーノは座っていた。
目が覚めない生徒。
可愛いげのないじゃじゃ馬だが、それでも大切な生徒だ。

「ディーノさん。……あの、大丈夫ですか?」

雲雀の傍から微動だもしないディーノに綱吉は心配そうに訊いた。
それにディーノは苦笑した。
その苦笑は自分に対してだ。
綱吉も雲雀のことが心配だろうに、ディーノを気遣っている。
年下の弟分に心配かけさせてしまい申し訳ない気持ちがしたのだ。

「大丈夫だ。わりぃな、ツナ。……どうだ、骸は?」

「まだ、起きてきません」

何かが精神世界への侵入を阻んでいるため、できないと言った骸。
無茶と無理を重ねればできないこともないが、下手をすれば脳死してしまうため乗り気ではなかった。
それでも骸は精神世界へ侵入してくると言ったのだ。


――ちょっと僕をコケにしたウサギを叩きのめしてきます


と、いつもどうりの笑みを浮かべ骸は言ったのだ。
綱吉は雲雀の左横で眠る骸を見た。
傍にはクロームがついている。
精神世界で何かあった時のための逃げ道として、骸が側にいるよう命じたのだ。

「……ぅ…」

小さく呻き、骸は緩慢に瞼を開けた。

「骸!目が覚めたのか」

「ええ。……雲雀恭弥が目を覚まさない理由がわかりましたよ」

簡易ベッドから降り、雲雀を見下ろす。
全員、骸の言葉に耳を傾けた。

「彼の身体に、精神がないんですよ。空っぽなんです、この体は」

「……は?」

言っている意味がわからず、ディーノは情けない声を上げた。
見れば綱吉も、他の者達も同じようによくわかっていない様子だった。
リボーンだけは納得したように頷いた。

「なるほどな。……たしかに、それだと雲雀が目を覚まさない理由がつくな」

「え、と。どういうことっすか、リボーンさん」

獄寺が全員の疑問を代表して訊いた。

「簡単だそ。人は身体に精神を宿してんだ。いわば身体は精神を宿す器みてーなもんだ。精神がなければ、身体は空っぽ、目が覚めないのはそれが理由だ」

「けど精神がなくなるって、そんなことあるのか?」

「ありますよ。僕がクロームの身体に憑依するとき自分の精神は身体からなくなっています」

山本の疑問に骸は事もなさげに言った。
確かに、復讐者の牢獄から釈放されるまで時々骸はクロームに憑依していた。
ならば身体から精神がなくなった、というのも納得できる。
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