REBORN!!短編

□六つ花
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はらはらと

天から舞い散る六つの花


覚えていますか?

貴方と見た、この無垢な花を―――



‥‥‥‥‥‥‥


「……ふぅ」

滑るように紙面を走る手を止め雲雀は息をついた。
ペンを置き腕を伸ばす。
溜まりにたまっていた書類は今はもう残り数枚となっていた。

「あぁ…空気入れ替えなきゃ」

暖房をかけている為温かい部屋。
その分空気が感想しているため窓を開け入れ換える。
冷たい風が体を突き刺さり身を震わせる。

「さむ……」

空を見上げれば鉛色が広がっていた。
冷たい冷気に鉛空。

「降るかな……」

降ってほしいような、ほしくないような。

そんなことをぼーと空を眺めながら考える。

「ん……?」

頬を撫でる白い影。

手を空へと伸ばす。
冷たい柔らかなものの感触が伝わった。

「雪……」

鉛の色にはらりはらりと色映える色。


――なぁ、知ってるか?


蘇る声。

優しく鼓膜を震わす声。


「ディーノ……」

伸ばした手をかえし掌を空へとかざす。


頬を撫でる白い花。


――雪ってさ……


雪が溶け滴が頬を伝う。

それはまるで泣いているかのようで。


――よくみたら六つの花びらがあるように見えんだろ?

――だから、雪のことを六花って呼ぶんだ

そう言って楽しげに笑う彼。

「君がいなくなって…もう一ヶ月がたったよ」

マフィアの抗争で殺されたときいた。

その時襲った果てしない喪失感。
忘れられない感情。

「ねぇ……どうしたら、忘れられるかな?」

胸が痛むんだ。
苦しいんだ。
切ないんだ。


「こんなの、知らないよ…」

今までこんな感情なんか持ったことなんかなくて。
どうしたらいいか、わからない。

「わからないんだ…ねぇ…教えてよ」

いつもみたいに、教えてよ。


はらはらと舞い散る六花。
汚れも何も知らない無垢な花。

「この雪と一緒に消えてくれるかな?」


無くなれ。

痛みも苦しみも何もかも。

無垢な花に抱かれてその花と共に消えてゆけ。


雲雀の願いを聞き届けるかのように優しく静かに雪は舞い散っていく。


「ディーノ……」


切なげに呼ぶその小さな声も舞い散る雪に吸い込まれ消えていった。

 

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