10/02の日記

21:02
学園パロA(冒頭部分)
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風が吹いている。
それはまるで悲鳴のような、男。
そして、どこか悲しげな、音色だ。
よく知っている学校。
その屋上のフェンスに彼はいた。
今は冬。
冷たい風が、肌を刺す。
このままだと雪でも降るのでは、と思うぐらいの寒さだった。
けれど、彼は寒さを感じている素振りを見せなかった。

「―――」

オレが、彼の名前を呼べば、彼はゆっくり、緩慢に振り返った。
彼の瞳と合った。
彼の瞳はきれいだと、いつも思う。
強い意思に覚悟。
自分を誰にも侵されない、侵すことを許さない、気高き瞳。
その瞳は、今はひどく揺れていた。
彼は、ゆっくりと口角をあげていく。
見慣れた、笑みを彼は浮かべた。
風が、悲鳴をあげている。
鎮魂曲のような、音色の音を奏でて吹き、鳴る。

「ごめん」

オレはただ、謝ることしかできなくて。
彼は微笑んだままオレを見つめていて。

「ごめん」

腕に温かいものが伝った。
赤い、紅い液体。
それがなんなのか知りたくなかった。
わかりたくなかった。

「ごめん」

こんなことになってごめん。
傷つけてごめん。

救ってあげられなくて、ごめん。

運命という巨大な流れに逆らうことができず、常に孤独だった人。

彼を救いたかったのに。

「ごめん」

頬にあたたかいものが伝った。

「……ごめん…」

ああ、なんで、こんなことになったのか。


この日の夜。
一年の終わりを告げる鐘が、近所の寺から鳴り響いた。

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