私の名前は…
□04,消失
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佐久間side
彼女「私の名前は……。」
それきり黙り込んでしまった。
彼女は背中を丸め、顔を俯かしており、表情が見えない。どんな表情なのか、何を考えているのか彼女以外は誰もわからない。
外見上では誰も判別出来ない。
彼女が話すまで、自分でも考えてみることにする。
彼女と全く同じ立場ではない。
でも、歳は近い感じがするのできわめて難しいことかもしれないが挑戦してみる。
彼女は俺達が来たとき、まだ目覚めたばかりなのかもしれない。
それとも俺達が病室に入ったことで、彼女を目覚めさせたのかもしれない。
そう考えると、まだ頭の中がぼんやりとしていて、上手く考えられないのかもしれない。
次に考えついたのは、誰もが一度は経験があるだろうこと。
俺にも起きたことがある。
テストする前までは覚えていた。しかし、テスト本番で答えが出て来ない。後ちょっとで名前が出て来そうなもやもやとしている感じ。
そういう状態なのではないか。
ふと、もう一つ考えが思い浮かぶ。
はたまた、記憶喪失というものになってしまったのではないか。
1番可能性が低いと思うが、なんらかの衝撃でそうなる可能性も否定出来ない。
もし、このよう
な状態だったら彼女は辛そうな気がする。
これらのどれかなのか、全く異なっているのか。
自分にはわからないことが多過ぎて嫌になる。
まだ、彼女は俯いた姿勢を崩さない。
さっきと同じ状態を保ち続けているのだ。
それはそれで凄いことだと思う。
いろいろ考えてみたがどれも同じくらいありえそうなので、彼女が話をするまで黙って待つことにする。
彼女に変な気を使わせないよう、医師らと他愛のない会話をする。
今の俺に出来る精一杯のことだろう。
母親達もそれを察してなのか、普通の会話をする。
本当にどうでもよい会話を繰り広げる。