私の名前は…
□05,作成
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検査の結果を彼女に伝える。
辛そうな、悲しそうな表情を浮かべる。しかし、受け止めた。
自分自身で。
私の病室は、私と医師の二人になる。
暗い雰囲気の中、これからについて話し合う。
私の名前がわからない=戸籍も不明。
新しく自分の戸籍を作る必要性があるのだ。急ピッチで。
それから、自宅。
今の私には自宅がない。
いや、あるのかもしれないがこの状態だとないに等しい。
よって、どっかの施設等に入る。入らねばならない。
それら諸々について医師が考え、用意があるらしい。
私は医師を信じて任せた。
医師の提案に乗った。
それによって進めていってくれるらしい。
問題が少し解決したと思う。
医師は私の頼んだ準備をはじめた。
私は一人病室で待っている予定だった……。
しかし、佐久間君と佐久間君のお母さんが入って来た。
佐久間「よう。手坂刹懦。何て呼べばいい?」
刹懦『て、ざか、せつ、な……。』
佐久間母「そう。貴女の名前は手坂刹懦になったの。」
刹懦『そうなんですか。』
佐久間「あー。俺達が勝手に決めたんだが気に入らなかったらごめん。変える。」
刹懦『えっ!!そうなんだ。ありがとう。佐久間君。こんなに素敵な名前をありがとう。』
佐久間母「刹懦ちゃんが気にいったみたいでよかった。ね、次郎。」
佐久間「あ、あぁ。」
刹懦『本当にありがとうございます。佐久間君と佐久間君のお母さん。』
佐久間母「もう、刹懦ちゃんかわいい。娘にしたいわ。」
刹懦『えっ……。』
佐久間「母さん。こいつが困っているじゃないか。」
佐久間母「えっ、ごめんね。冗談よ、冗談。それにしても、佐久間こいつはないでしょう。名前で呼びなよ。名前で。ね、刹懦ちゃん。」
刹懦『えっと、私は別に平気です。好きなように呼んでもらって構わないです。』
佐久間母「刹懦ちゃん優しい。よかったね、次郎。でも、名前で呼んであげれば〜。」
佐久間「はぁー。わかった、わかったよ。名前で呼びますよっ。刹懦って。これでいいんでしょう。母さん。」
佐久間母「ん。よろしい。」
刹懦『そんな無理しなくてもいいのに。でも名前で呼んでくれてありがとう。佐久間君。』
佐久間母「次郎は好きなように読んでいいよ。次郎が刹懦ちゃんを名前で呼ぶのは当たり前。だって、刹懦って名前つけたのこいつだもん。」
刹懦『えっ、そうなんだ。ありがとう。えっと、……じゃあ、さっくん?』
佐久間の顔はみるみる赤くなる。恥ずかしそうにはにかむ。
そして黙り込み俯く。
佐久間母「いい呼び方じゃない。」
佐久間「…………ん。別に御礼なんて……。でも、どういたしまして、刹懦。」
俯いたまま答える。
佐久間母「二人ともこれからも仲良くな。あっ、刹懦ちゃん。私のことはお母さんと思っていいから。」
刹懦『えっ。ありがとうございます。気を使ってくださって。』
佐久間母「刹懦ちゃんが気にする必要はない。だって、これはただの私達のお節介。」
刹懦『そうですか。でもありがとうございます。あと、私の名前をつけたのが佐久間なら、苗字は誰がつけたくださったのですか?』
佐久間母「それは私だけど。」
刹懦『そうなんですか。ありがとうございます。』
佐久間母「御礼を言われるようなことでは……。」
刹懦『でも、言わせてください。ありがとうございますって。』