私の名前は…

□02,目覚め
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朝ごはんを食べ終え、こたつに入りながらテレビ番組を見る。

一応、冬休みの宿題を近くに置いてある。

やる気はゼロだけど。

やる気がおきたらやろうと考えている。

おきるわけ絶対にないけど。

やる環境を整えているだけ自分は偉いと感じる。

とは言え、毎日同じことをしている。

で、毎日同じ結果になる。

俺が一人でこたつでぬくぬくとしていると、母親が部屋の中に入ってきた。

洗濯物などの掃除がすべて終わったんだろう。

母親も俺の入っているこたつに入ってきた。

そして向かい側に座った。

しばらくの間、お互いに黙ったままこたつに入っている。

その状態が数分間続いた。

嫌な感じの全くしない沈黙。

母親が口を開いた。

佐久間母「今日もあの女の子のお見舞いに行く?」

佐久間「あ〜。どうするかなぁ?」

佐久間母「そうね、昨日も目が覚めなかったからね。」

佐久間「うん…。そうなんだよね。」

佐久間母「今日は目が覚めると信じてお見舞いに行こうよ。信じ続ければ、きっとそれが現実になるよ。」

佐久間「そうかな〜。」

佐久間母「そうだよ。今日も行くよ!!それに、目が覚めたとき誰もいないとかわいそうじゃ
ない。」

佐久間「そうだね。じゃあ行くか。」

と、二人は同じタイミングで腰を上げてこたつから出る。

打ち合わせを全くしていないのに息ピッタリだった。

さすが、親子だと思う。

今日も寒いので、しっかりと着込み防寒する。

前のチャックもしっかりと閉めてマフラーを幾重にも首に巻き付ける。

ぱっぱと準備をして、家のドアを開ける。

外から冷たい風が顔に、吹きつける。

思わず顔をしかめ、身震いする。

相変わらず空気が冷たく、顔に突き刺さるように吹き付けてくる。

それに耐え、歩を進める。

昨日と同じ道を一歩ずつ歩いていく。

昨日より雪が積もっているので歩きにくい。

気を抜くと足を取られそうになる。

一瞬たりとも気を抜くことが許されない。

そんな道を、昨日よりも時間をかけて慎重に慎重に歩いていく。

そうしてやっとの思いで病院に到着し、自動ドアをくぐる。

昨日と全く同じ手順で受付を済ます。

待合室には大勢の人がいる。

ほとんどの人がマスクを着用し、思い思いに自分の名前が呼ばれるまでの時間を過ごす。

ある人は病院に置かれている雑誌を読み、またある人は近くの人と他愛のない会話。

ただ待つ
だけのどうってことのない時間を有意義な時間になるようにしている。

受付をさっさと済ませて、彼女の病室へ向かう。

面会時間はとうに始まっており、自由に面会が可能だ。

彼女は一人で倒れていたので誰なのかは誰も知らない。

そのため、面会に来る人は0だ。

彼女の病室は受付をした待合室からそう遠くない。

昨日は病室の前に来るのに少し道に迷った。

今日は昨日の二の舞をせず、一直線に向かうことが出来た。

彼女の病室の前に立つ。

そっとドアに手をかける。

嫌な予感が頭の中を駆け巡る。

もう、この病室の中には誰もいない、俺達がお見舞いをしている間に息を引き取るとか。

今日は目覚めますようにと願いドアを慎重に開ける。

そして、足音をできるだけたてず中に入る。

開けたドアを母親がゆっくりと静かに閉める。

俺は彼女の寝ているベッドに視線を移す。

彼女と視線がぶつかった。

────────────End─
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