ちはやふる
□第三首
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それは、一瞬の光。
まるで、私をまあるく包み込んでくれるような…
体温。
ちはやふる 第三首
彼の笑顔が綺麗で、つい写真を撮ってしまった。
自分でも驚くほどスムーズにカメラを構えてシャッターを押してた。
「…あ、ごめん。」
取りあえず謝る。
私の中の何かが、今がシャッターを切る時だ、って言ってたみたいだった。
でも、やっぱり勝手に撮っちゃ悪いよね。
しかも同じ学校の人だし。
「えと…悪気があったわけじゃないから、ごめん。」
「え、あ、ああ。いきなりだったか驚いただけで、別にいいよ。それより行こう。試合が始まる。」
「…試合?」
「そう、試合。山田さんは興味あるかな?今、競技かるたの大会やってるんだ。俺の友達も出ててさ。次、決勝なんだ。」
「へえ、そうなんだ。競技かるたって何するの?」
「そうだな。百人一首って小学校とかでやったろ?あれをもっと早いスピードで競争するんだ。」
「百人一首…あの、天皇とか短歌書く人とかの作品を百首に厳選したものだよね。それが競技になるんだ…。かるたと同じ次元のお遊びかと思ってた。」
私の言葉を聞いた途端、彼はガクッと肩を落とした。
「お、お遊び…。…俺らにとって、競技かるたは遊びじゃなくて、真剣勝負なんだ。と、こんな話はいいとして、早く行くぞ!千早の応援が出来なくなるっ!」
真剣な眼差しで、でもどこか遠くを見つめる真島くん。
それよりも気になることが一つ。
「…千早…?」
私は小さく呟いた。
千早ってあの千早?
綾瀬千早?
ちょっとまって、真島くんってなんで千早の事知ってるの?
確かにあの子はかるた馬鹿だったけど、今決勝戦で千早が出てるって事?
千早ってそんなに強いんだ。
そうこう考えているうちに、私は真島くんに手を引かれ、決勝戦が行われるらしい部屋の窓際まで連れてこられた。
「あそこ。あそこにいるポニーテールが千早って言って、俺の友達。」
言われた通りに窓を覗く。
そこには、畳に正座をしてかるたのカードとにらめっこをしている千早が居た。