Lust

□幕間
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 零・空華、瑞希の部屋。放課後、中庭に集合した後4人は寮へと帰り瑞希の部屋にいた。

「相変わらずの部屋だね。」
「まー、仕方ないでしょ。パソコン周辺機器がちょっとね。」

 学園のトップである空華の部屋は他の生徒に比べれば大きく作られている。ベッド、机、クローゼットに本棚。そして、もうひとつ置いてある机にかなりのハイスペックと思われるデスクトップPCとノートパソコン、無線LAN、ハードディスクと決してちょっととは呼べない量の機械が設置されていた。

「どこら辺がちょっとなんですの?」
「こんだけないと、クラッキングなんてかけられないの。」

 これでも足りないぐらい。と言いながら、瑞希が椅子に座りPCを立ち上げる。誓と紗良も指定となった場所に落ち着き、桃華は勝手知ったキッチンに行き4人分の紅茶を淹れる。

「さーて、やりますか。」

 瑞希は眼鏡をかけ直し、指の関節を鳴らすと2つの画面を見つめ目的のデータにアクセスする。
 PCの研究、調査を目的としたハッキングとは違い、秘匿データなどに不正にアクセスすることを指すのがクラッキングであり法に触れる行為だ。

「帝都の治安を維持するためにいる俺たちが法を犯してちゃ意味ないな。」

 誓は桃華が淹れた紅茶を飲みながら自嘲気味に言う。それに紗良が笑顔を返せば、画面に集中していた瑞希が振り返る。

「僕たちで終わらせるんでしょ、こんなのは。」
「当たり前だ。」




 瑞希は画面と睨めっこ、桃華は次の任務のターゲット情報のまとめ。誓と紗良は前回の任務の報告書を書いていた。そうしている間に時間は過ぎて行き、陽はとうに沈んでいた。

「任務出動の最終も過ぎましたわ。今日は本当に任務がありませんでしたわね。」

 紗良の声に各々時計を確認すれば、21時を回っていた。瑞希は眼鏡を机に置き、眉間を親指と人差し指で解すと背伸びをする。

「瑞希、何か分かったか?」
「んー、今のとこ4つってとこかな。」
「今月はハイペースだねぇ。」

 画面に映された重役名簿にざっと目を通していく。何百という名前で埋め尽くされ、ところどころに赤く塗りつぶされた部分が見て取れる。

「重役名簿はいいですけど、ブラックリストの方はもっと多いみたいですわね。」
「そっちに関してはそのうち、俺たちに任務が言い渡されるだろう。」
「だね。まー、今のところはこんなもんかな。」

 瑞希は必要な情報をUSBメモリーにコピーし、PCの電源を落とす。もちろん、データへの侵入の痕跡を消すことは忘れない。

「それと、セキュリティーがかなり厳しくなってきてるから今までみたいに頻繁にクラックできなくなってる。」
「そろそろ潮時か。」
「まー、絶対に無理って訳じゃないし。」

 大変になるってだけ。といいながらUSBを鍵の付いた引き出しにしまう。

「それに、まだまだ情報は足りませんわ。」

情報は持っていて損にはならない。時に交渉材料として使い、より有力な情報を手に入れてはロジックを使い整理。それはまた、自分たちの力になる。

「そろそろ、解散にしようか。」

 重くなった空気を解すように、桃華が明るい声で言う。
 カーテンが開け放たれた窓の外に見えるのは幽かな月の光のみ。しかし、それも厚い雲に覆われ雨へと変わる。雨は次第に強くなり豪雨になる。

「雨…か。」
「明日の任務に差し支えないといいですわね。」
「そう、だな。」

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