Lust

□第2章*バディ
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 あの日、あの時、あの場所で俺は独りになった。
 もし俺に、大切なものを護れる力があったなら、今でも貴方と過ごせていたでしょうか。



 12年前A-5地区。警察庁刑事課第5係オフィス。会議が終わり、刑事たちはそれぞれのバディと一緒に捜査、聞き込みへと向かう。
 刑事歴10年の高野約も信頼のおける相棒とオフィスを出ようとしていた。スーツの上着を羽織り携帯をポケットに仕舞う。準備は万全と意気込みドアに手をかける。

「おい、約!お前また忘れてるぞ。」

 約の背に降って来たのは相棒の声。同い年だが刑事歴14年目のベテラン、坂牧誠二はあきれ顔で溜息を吐く。

「何を忘れてると言うんだ?携帯なら持ったが。」
「違うっての、ほれ。」

 目の前に突きつけられたのは刑事の身分証明書、警察手帳だ。慌てて内ポケットを確認するが入っている気配がなかった。

「たく、お前は。毎回毎回、何かを忘れないと駄目なのか?」
「む…、今回はたまたまだ。」
「いや、高校の時から変わってないよ。」

 昔はなぁ。と、高校時代を思い出しながら、ドアノブに手を伸ばす。

「財布、携帯、教科書、部活で使う竹刀だろ。酷い時はカバンごと忘れたっけ?」
「あー、もう分かったから黙らんか。」

 約と坂牧は高校時代の同級生で、クラス、部活ともに3年間同じ悪友だ。卒業と同時に刑事になった坂牧と、大学卒業後に刑事になった約。刑事になった今でも相棒は変わらず、お互いしかいなかった。

「早いとこ行くぞ、誠二。」
「はいはい。」

 何とかその場を収めようとする約は、まだ話を続けようとする坂牧の背中を押してオフィスを出て行った。



 2人が刑事になった頃よりも事件は減った。いや、むしろ、帝都の犯罪件数は年々減少傾向にある。
 それもこれも零の活動の賜物。犯罪を犯せば零に殺される。一般人にとっては全くと言って関係ないことだが、犯罪を企てる様な輩にとっては恐怖政治と一緒だ。
 だからといって、刑事が捜査をやめる訳にはいかない。零より先に犯人を逮捕しなければ犠牲者が増えるだけだ。犯罪を犯したからと言って殺すのは納得がいかない。法で裁かなければ意味がないのだ。

「そういえば、誓君は元気か?」
「あぁ、相変わらずだ。1月に5歳になった。」
「写真とか無いのか?」
「ん?あぁ、ちょっと待て。」

 現場に移動中、坂牧は約に息子の話を振っていた。写真はと聞かれ、約は上着のポケットから一冊の手帳を取り出した。
 目的のものを探そうと手帳を捲っていく。ふと、何かのメモ書きらしきものが落ちた。

「約、何か落ちたぞ。」

 坂牧が拾い上げるとメモ書きの文字が目に入った。“零――実験―力者献――リ――”
 約は素早くメモを奪い取ると、ポケットへと突っ込んだ。一瞬だったため、所々読みとれない場所もあるが確かに、零と書かれていた。

「お前、何を調べて…?」
「関係ない。」
「最近、陰でなんか調べてると思ったら。」
「関係ないって言っているだろ。」

 約はスラックスのポケットに手を突っ込み、さっさと歩いて行こうとする。その肩を坂牧は後ろから掴み止める。
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