二次小説

□彼方の岸から悲しき願いを込めて 4
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リューイ

リューイ

リューイ

心の内でひたすら名前を呼び続ける。
それに応える声はなく、ジェイは氷月城の廊下をがむしゃらに走った。

リューイがいなくなった。
その事はジェイの耳にすぐに届いた。

朝早く、まだ日も昇りきっていないというのに、ドアをけたたましくノックする音でジェイは目を覚ました。
何事かとドアを開けると、血の気を失くしたアーチャがいた。
何事かと訊ねると、ただ一言「王太子がいなくなりました」と答えたのだ。

リューイは昨日までぴくりとも動かず眠り続けていた。
それが突然姿を消すなんて誰が思っただろう。
すぐさまリューイの捜索が始まり、城内はもちろん、城外にも捜索隊が出された。
国民にリューイの事が気づかれないように、との国王命令に従い、慎重に動く。

ジェイももちろんリューイを探しているが、まだ城の中にいるような気がして、外の捜索隊には加わらなかった。
根拠はないが、リューイが近くにいるような気がする。
それは分け合った緑翠晶のおかげか、二人の間にある強い絆がそう感じさせているのか分からないが、
ジェイは己の直感に従い、城内を探し回る。

部屋という部屋を全て探し、庭園の草陰も隈なく見たが、どこにも求める姿は見当たらない。

すぐ傍にリューイを感じるのに。

もどかしさ、切なさ、不甲斐なさ。
あらゆる感情に押しつぶされそうになりながらジェイはひたすらリューイを求める。
そしてふと、あることに気が付いた。

まだ、探していない場所がある。

ジェイはすぐに踵を返し、淡い金髪を乱して駆ける。
まさか、でももしかしたら。
相反する想いを抱え目的の場所へと急いだ。


足を止めたのは、自分自身に宛がわれた部屋だった。
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