二次小説
□美飾
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エシャンテの女王アサノとの謁見が終わり、リュ―イはまとめていた髪をバサッと解いた。
背中まである長い髪がサラサラと素直な音をたてる。
男子禁制の場はこりごりだ、という表情で鏡の中の自分を見つめる。
女物の衣装を着て、しっかりと化粧をしたリュ―イはどこからどう見ても美少女。姉のノーイに似ているかもしれない。
そんな自分自身を見つめて、リュ―イは盛大に溜息を吐いた。
吟遊詩人たちに『少女と見まごう』などと歌われているが、まさかこんな格好をする日が来るとは思ってもいなかった。
「何、まだ着替えてねぇの。もしかして癖になりそう?」
同じく女装をしていたジェイが、もうすっかり元の格好に戻って部屋に入ってきた。
その軽口にリュ―イは顔を顰める。目で反論するとジェイは皮肉な笑みを浮かべた。
「今から着替えようとしたところにあなたが来たから着替えられないのだけど?」
遠まわしに出て行ってほしいと言うが、ジェイは出て行くどころかツカツカと歩み寄ってくる。
リュ―イはまた溜息を吐いてすぐ目の前まで来たジェイを見上げる。口元を歪めて自分を見てくる視線に、リュ―イは嫌な予感がした。
一歩後ろに退いた瞬間、グッと力強く抱きしめられた。
「何で逃げんのよカワイ子ちゃん」
「…………何となく」
しっかりと捕まって逃げられそうにないと悟ると、抵抗せずに背中に腕を回した。
珍しく諦めが早いリュ―イの行動に満足して、少しだけ腕の力を緩め、化粧が施された顔を眺める。
綺麗だ、と素直に思った。もともと愛らしい容貌をしているが、少し化粧をするだけで素顔のものとは違った美しさが出る。
白粉の塗ってある頬を親指で丸く撫でると、リュ―イはくすぐったそうに青灰色の瞳を細めた。
ほんの少し前まで灰色だったその瞳は、いつの間にか綺麗な青になっている。
「もともと色白なのに白粉なんて塗りたくる意味はあるのかねぇ」
柔らかな頬を指でつつきながら言って、そこに口づけをした。
抱きしめられた時点でそれくらいのことは覚悟していたのか、普段ならとても動揺するのにまったく動じない。
白粉を塗っているのにもかかわらず、頬が桜色に染まったが。
「まったく、あなたという人は…」
呆れたように、照れたように言って、紅がさしてある唇を一瞬だけジェイの頬に押し当てた。
ほんの一瞬でもしっかりと紅はそこに残り、形の良い唇の跡がつく。
鏡でそれを見ると、ジェイは不敵に笑って言った。
「いいもん付けてくれたね、リュ―イちゃん。オディロカナまでこのままでいて子爵さまにでも自慢するか」
「わー!やめてやめて!!」
思いも寄らないジェイの発言にリュ―イは飛び上がらんばかりに驚いて、慌てて布で頬に残る紅を拭った。
かなり焦っているため乱暴な手つきになる。
「いででででで!いてぇよバカ!」
「バカで結構!暴れないでよ!!」
「もっと優しくすんなら暴れねぇっつの!見かけによらず乱暴だねリュ―イ姫は」
「わ、私は男だ!!」
ギャ―ギャ―と煩く言い合いながら、なんとか跡形も無く綺麗に拭った。
ホッと安堵するリュ―イに対し、ジェイは少なからず残念そうにする。
そんなジェイのことなど気にせずに、リュ―イは自分の唇についてある紅も綺麗に落とした。
元が薔薇の唇なのだから、雪の肌に塗った白粉と同様あまり変わらない。
何度も何度も擦ってまったくついていないことを確認すると、ジェイの首に腕を回し、少し背伸びをしてもう一度同じところに口づけをした。
「よしっ、大丈夫」
無邪気に笑うリュ―イの頬に、ジェイもまた唇を落とした。
end
***
オメーらチュッチュチュッチュしまくりだから小説。
いや〜、女装話は萌えましたわ。特にジェイがリュ―イに
「カワイ子ちゃん」「犯すぞ、バカ」
って言ったのがもの凄く萌えです。何度も読み返しました(バカ)