二次小説

□岐路
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国中の誰もが寝静まった時間、ジェイは目を覚ました。
誰かが部屋に入ってきた。気配が近づいてくる、が、殺気はない。
ジェイは暗闇の中で目を凝らす。剣もしっかりと握り、いつでも抜ける体勢になった。

「ジェイ…」

侵入者の声を聞き、ジェイは肩の力を抜いた。警戒態勢を解き、安堵の笑みを微かに浮かべる。
手招きをすると、夜目の効く侵入者は静かに歩み寄って来た。
腕をとりグイッと引くと華奢な体はジェイの方へとあっけなく倒れこんだ。

「どうしたよ?リュ―イ」

すっぽりと腕の中に収まった少年の栗色の髪を慈しむように撫でると、リュ―イは少しだけ微笑んだ。
しかしその瞳は灰色で、悲しみを帯びている。暗がりで見えなくとも、ジェイは雰囲気で何となくそれを察した。
そしてその理由も、手に取るように分かる。

「…一年経ったら帰ってくるから、な?」

明日、ジェイは故郷カディアに帰る。
一年で戻ると何度も約束したが、リュ―イの心は晴れなかった。
一年は長い。別れるのはとても辛い。けれど、笑って見送りたい。
そんな様々な思いがリュ―イを混乱させる。
苦笑しているジェイの顔が霞んでいくと思ったら、生暖かいものが頬を伝った。灰に近い青灰色の瞳から涙が溢れる。

「…っく」

声を出さない限り、この暗闇では泣いている事がバレないというのに、リュ―イは小さくしゃくり上げてしまった。
すぐに後悔するがもう遅い。

「あらら、泣くんじゃないよ王子さま。これだから子供は…」

そう言うジェイの声も、心なしか元気がない。
ジェイもまた辛いのだ、リュ―イと別れることが。
何年も溶けることのなかった凍った心を、一晩で温かく溶かしてくれた唯一の存在。やっと見つけた帰る場所。
まだ出会ってからほんの少しの時間しか経っていないというのに、いつの間にかお互いはとても大きな存在になっていた。

「…今日は一緒に寝てもいい?」

小さく呟いたその言葉に、ジェイの心臓が飛び跳ねた。
何動揺してんの俺相手は十四のガキだぞ男だぞ深い意味はないっつの。
自分で自分に言い聞かせて心を落ち着ける。一度深呼吸をしてからリュ―イを抱き込んでいる腕に力を込めた。
耳元で囁くように言葉を結ぶ。

「しょうがねぇなガキンチョ。俺様に添い寝してもらえるんだ、ありがたいと思え」

ボスッとリュ―イごとベッドに沈むと、ゴロンと横向きになった。
ちょうど腕枕をする状態になり、何故だか少しだけ緊張する。前にも一度、こうしてくっついたまま眠った事があったのに、その時は感じなかった不思議な昂揚感を感じる。
リュ―イもまたジェイと同じ気持ちを抱いていた。
その気持ちが何なのか、二人はまだ分からない。分からないけれど、今はまだこのままでいいのかもしれない、と考えながら同時に瞼をを閉じた。

明日から一年間、この温もりを感じる事ができなくなる。
できなくなるからこそ、今のこの瞬間を忘れずにいようと二人は思う。









end









***
ジェイはもっとカッコイイのに私が書くとへタレに…(汗)

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