二次小説
□知らない気持ち
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カイネがいなくなり、ジェイは安堵した。首にぶら下がれたままギャンギャン喚かれたのは初めてだ。
コキコキと首を回してふとリューイを見ると、なんとも奇妙な顔をしていた。
泣きそうで怒っているようで戸惑っている、というような表情だ。しかも目が合ったと思ったらサッと逸らされた。
「リューイ?」
掛けた言葉に、返事はなかった。
まだ少し時間があるからと、ジェイは中庭に出た。
誰もがもうすぐ行われるパーティーの準備などに忙しく、そこには誰もいない。
ジェイは空を仰いで、深く息を吐いた。
「ジェイ」
後ろから名を呼ばれ、ジェイはゆっくりと振り返る。
呼ばれる前から気配は感じていた。誰なのかも、予想はついていた。
「何やってんのよリューイ。こんなところで油売ってていいのかな?」
ジェイの軽口には答えず、リューイはいきなりジェイの胸に飛び込んだ。突然のことにジェイは驚いて目を見開く。
背中に回された小さな手が、ぎゅうっと服を掴んだのを感じた。
ジェイもそっとリューイを抱きしめ返す。
「どうした?何かあったのか?」
優しい声音で語りかけながら栗色の髪を撫でる。その髪はリューイの性格を表しているようにサラサラと素直に滑る。
その感触を楽しんでいると、リューイが顔を上げた。
「さっき…」
「うん?」
手を止めて大きな青灰色の瞳を見つめる。
「さっきカイネがあなたにこうしているのを見て…」
ジェイの首に飛びついてきたことだろう。
しかし、とジェイは思う。
あれは今のように「抱きしめあう」なんて色っぽいものではなく本当に「飛びつく」だったが…。
考えているとまたリューイが顔を胸に押し付けた。
「なんだかとっても…嫌だった」
ジェイは言葉を失った。
この王子様も「嫉妬」という感情を持っているのか、と妙に感心してしまった。
しかしきっと、リューイはその感情が何なのか分からないのだろう、とジェイは思う。
いつか教えて、そしてからかってやろうと心の内で思った。
だが決して、今とても嬉しいことは教えない、とも思った。
end
***
「精霊の女王」での話。
カイネが飛びついた瞬間きっとリューイはヤキモチ妬いた!でもその気持ちが何なのか分からなくて戸惑ったんだよきっと!!