二次小説

□勘違い
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リュ―イ:私があなたにくちづけをするところで…

ジェイ:おいおいおいおい、そんな言い方すんな。勘違いする奴がいるだろ

リュ―イ:?勘違いって?

ジェイ:えっと、だからその…わかんなきゃいいんだよ!わかんなきゃ!

リュ―イ:どうしたのジェイ?顔真っ赤だよ?








「ってことが前にあったよね?」

「………そうだな」

少し前にした会話を思い出し、リュ―イはしみじみと言った。
ジェイは決まり悪そうに目を泳がせ、のんびりと語るリュ―イと目をあわせないようにしている。リュ―イはそんなジェイの様子に気付かない。
リュ―イにとってはほのぼのとした会話でも、ジェイにしてみれば痛いところをつかれている状態なのだ。
あの時ジェイは深い怪我を負い、リュ―イの癒しの口づけによって助けられた。それ自体も苦い思い出なのだが、あの会話は今でも忘れられない。自分一人だけわたわたと焦っていたのは鮮明に覚えている。

「それで勘違いってなんなの?」

「だ、だからわかんなきゃいいんだよ!」

再びその話がぶり返し、ジェイは耳まで赤くして言った。
この王子さまはどこまで天然なんだ!ジェイは心の内で叫んだ。
『リュ―イの口づけ』というだけで鼓動が早まるのを抑えられないのに、当の本人がそれを事も無げに言うからジェイはさらに動揺する。

「分からないから知りたいのに…意地悪」

拗ねて口を尖らせるさまは年よりも幼く見えて愛らしい。
思わず見惚れていると不意に袖を引っ張られた。
不思議そうに首を傾げるリュ―イの青灰色の瞳と目が合った。

「どうしたの?ボーっとして」

「い、いや、何でもねぇよ」

「何でもなくないよ、顔も赤いし…もしかして風邪?」

「おいっ、リュ―イ!?」

リュ―イの柔らかな手がジェイの顔を挟んで、そっと顔を近づける。
勿論ジェイは慌てたが振り払う事などできるはずもなく、体を硬直させた。
こつん、と額同士が合わさり、ジェイの視界いっぱいにリュ―イの美しい容貌が広がった。体温がどんどん上がっていくのが分かる。脈が速まり、ごくっと咽を鳴らす。

「う〜ん…やっぱりちょっと熱いかも」

それはあんたのせいだよ。口には出さずに突っ込む。
リュ―イは額を離さず至近距離のまま話すので、熱い吐息を感じてジェイは肩を震わせた。それを見てリュ―イは顔を顰める。

「ほら、風邪だよ。暖かくして寝てないと。ね?」

「……………おう」

心底心配そうに言われてはこう返すしかない。

「『勘違い』の話は風邪が治ってからでいいから」

(また聞いてくる気かよ!)

上手く流れたと思ったがリュ―イはジェイが思っていた以上に『勘違い』が気になっているようだ。
こっそり苦笑して対処法を考えていると、頬に何か柔らかいものが触れた。

「…私が治せるのは怪我だけど…気持ちだよ」

少し照れた顔でそう言うと、お大事にと一言残して静かに部屋を出て行った。
暫く呆けて、唐突にボッと赤面した。
今リュ―イが何をしたか、自分は何をされたか、気付いてしまった。
優しい、幼い口づけ。
頬に残る感触は、あのふっくらとした唇の感触。

「………勘違いすんぞ」

呟いて、淡い金髪をガシガシ掻いた。









end









***
虚飾の檻(後編)の後書き大好きです!
あ、書いてあるのは記憶を辿ったものなので多少違うと思います。

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