*薄桜鬼*
□苦くて甘い愛を君に
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そうして何もちゃんと言い訳出来ないうちに、
私の家に着いてしまった。
父様はだいたい仕事でいないし、
薫もいつも帰ってくるのは遅いから、
家には私一人だけになることが多い。
沖田先輩はそれを良いことに、
いつも私の部屋でのんびりしていくのだ。
だから今日も、自然な流れで私の部屋に入って来た沖田先輩は、
突然振り返って、私に何かを差し出して、言った。
「ハッピーバレンタイン、千鶴ちゃん」
そして『はい。』とその箱を手渡してくる。
開けてみるとーー中には色とりどりのキャンディや金平糖が入っていて、
きらきらと輝いていた。
「わぁ…!綺麗…!」
私は思わず感嘆の声をあげた。
私がありがとうございますと言うと、
はい、と手を差し出してきた。
「千鶴ちゃんからは?何かくれないの?」
…言えない。こんなに期待に満ちた笑顔で言われたら。
チョコ、作るの失敗しました、なんて言えない…
「え…っと…」
「うん?」
でも他には何も用意していなかったし…
どうすれば良いんだろう…
「千鶴ちゃん?」