*薄桜鬼*

□恋色夏夜
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それは、2人で暮らしはじめて、しばらくだったある夏の日のことー……



「ねぇ、千鶴。花火、見に行こうか。」


僕はふと思いついて、口にしてみた。


「え……?」


千鶴は僕のいきなりの提案の意図が分からないみたいで、困惑してるみたいだったから、
とりあえず僕は続けた。


「それでさ、浴衣、着てよ。」

「は……?」

「前に京で着た時は結局、屯所から出なかったし、
大文字焼き…送り火だって見に行けなかったでしょ?
せっかく浴衣、着てたのに。」

せっかく浴衣、あんなに似合ってたのに。
まぁ外に出ちゃったら他の人にもあの姿を見せてしまうことになったから、
良かったとも思うけど。


「いえっあの時はっ…その…
総司さんと過ごせたんですから、それで嬉しかったというか…その……」


っ!!
何て可愛いことを言うんだろう。
あの時のことを思い出したのか、
耳まで真っ赤になって…
本当にこの子は何て可愛いんだろう。

でも、ここまで赤くなってると、少しいじめてみたくもなっちゃうわけで。
あえて理由に気付いていないフリをすることにした。


「あれ?どうかしたの?」

「な、何でもないです!!」

「なら、どうして君はそんなに真っ赤な顔をしてるのかな」

「そ…それはっ……」


真っ赤な顔で必死にごまかしてる。
そんなところも愛しいと思う。
僕はクスッと思わず笑ってから、言う。


「まあ良いや。それで花火、行くよね?」

「はい!」

千鶴は、元気に、満面の笑顔でこたえてくれた。

「それと、もう一つだけ質問。」

そう言って僕は少し不思議そうな顔をしている千鶴の耳もとでささやく。

「また、すいか、食べさせてくれるよね?」


そう言ったとたん、再びみるみる赤くなっていく。


「〜〜〜〜〜っ!!総司さんっ!?」


そして真っ赤な顔で少し怒ったように睨んでくる。

ちっとも怖くなんか無い。むしろ可愛いとさえ思うけど、

「あれ?駄目なの?」

僕は少し残念そうな、悲しそうな声を出す。
すると、あわてて首をふる。

「だ…駄目じゃないですっ……」

「そう?なら、楽しみにしとくよ。」



きっとその時になったらまた赤くなるんだろうな、とか思うと、
明日にでもすいかを買いに行こうかな、と思う
そんな初夏の夜のことー





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