*薄桜鬼*

□苦くて甘い愛を君に
2ページ/6ページ


そうして何もちゃんと言い訳出来ないうちに、
私の家に着いてしまった。

父様はだいたい仕事でいないし、
薫もいつも帰ってくるのは遅いから、
家には私一人だけになることが多い。

沖田先輩はそれを良いことに、
いつも私の部屋でのんびりしていくのだ。

だから今日も、自然な流れで私の部屋に入って来た沖田先輩は、
突然振り返って、私に何かを差し出して、言った。


「ハッピーバレンタイン、千鶴ちゃん」


そして『はい。』とその箱を手渡してくる。

開けてみるとーー中には色とりどりのキャンディや金平糖が入っていて、
きらきらと輝いていた。


「わぁ…!綺麗…!」


私は思わず感嘆の声をあげた。
私がありがとうございますと言うと、
はい、と手を差し出してきた。


「千鶴ちゃんからは?何かくれないの?」


…言えない。こんなに期待に満ちた笑顔で言われたら。
チョコ、作るの失敗しました、なんて言えない…


「え…っと…」

「うん?」


でも他には何も用意していなかったし…
どうすれば良いんだろう…


「千鶴ちゃん?」
                     
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ